築地場内ツアー禁止に見る「観光後進国」日本

日々、日本に訪れる外国人観光客は増え、ニュースで「インバウンド」という言葉を頻繁に見聞きするようになりました。

築地や浅草といった観光地は、数年前まで、平日の昼間なんてあまり人がいなかったのに、今はごった返しています。

そんな中、東京一の観光地「築地」において、「ツアーは禁止」とのお触れが改めて出されています。
「『観光立国』を目指すんだ」と首相も意気込むなかで、「おもてなし」を謳う東京都の対応に、とても違和感を感じました。

確かに、ビジネスの妨げになりつつある観光客の増加

以前より、築地の場内市場では、事業者と観光客の間で、
観光を巡ってのやり取りがありました。

マグロのセリをあまりに多くの人が見に来るようになる中で、
一旦は全面的に禁止された時期もありました。

紆余曲折を経て、現在は、120名限定でマグロのセリを開放し、
場内へも9時以降じゃないと観光客は入ってはいけないという決まりになっています。
また、「5名超のグループで歩かないように」という注意書きもされていました。

しばらくはそのような状態が続いていたのですが、
昨年・今年と訪日外客数が増えるにつれ、
これまでにも増して多くの外国人観光客が築地に訪れるようになりました。

ターレと呼ばれるトラックが市場内を走り回っているのですが、
観光客をよける様子は、職人芸というか、事故と紙一重というか、
本当にひやひやする状況が続いています。

それに、観光客が、道をふさいでしまったり、許可なく写真を撮ったりすることで、
観光客の増加がビジネスの妨げになっている部分は否定の出来ないところでした。

ツアーを締め出すという事が本当に解決策なのか

そんな中、6月に入り、改めて協同組合の方から、
場内の組合員に対し、通達が出されました。

その内容は、これまでにも伝えられていた
「5人以下で動くこと」「商品には触らない」「車両に注意する」「フラッシュは使わない」
といった観光する側の最低限のマナーの確認が殆どだったのですが、
一点だけ「場内でのツアー・ガイドによる案内の禁止」という内容がありました。

「場内でのツアー・ガイド等の営業行為は条例により禁止されてます」とのことだったので、
今に始まったことではないと思うのですが、とても違和感を感じました。

過去にどんなやり取りがあったかわかりませんが、
外国人に「していいこと」「ダメなこと」を伝えてあげられるガイドが一緒にいたら処罰の対象で、
何も知らない外国人が中を勝手に歩く分には構わない、というのはどうしたものなのか、と。

観光客が増えてきて、ビジネスの妨げになっているのであれば、
勝手に観光する人を制限して、
ガイドにルールを守らせるよう教育して観光させた方が絶対効果的です。

でも、実際は、逆を推奨しているのです。

団体を禁止するのは、理解できますが、
ガイド自体を禁止することについては、理解できませんでした。

規制は「ビジネスの妨げにはならないようにするため」と勝手に思い込んでいますが、
その目的が違う目的なのでしょうか。

この通達は、協同組合と東京都が話し合いのもと決められた対応とのこと。
「条例により禁止されている」とのことでしたが、
何のための条例に反しているのか調べても分かりませんでした。すみません。
(誰か教えてください。)

 

観光をビジネスにすることが出来ていない東京

東京都はつい先日、「おもてなし東京」と称し、
ボランティアガイドチームが活動を始めたばかりですが、
東京都の掲げる「おもてなし」とはなんだろうという事も同時に疑問に感じてしまいました。

外国人旅行者に観光案内をする東京都のボランティアチーム「おもてなし東京」が19日、活動を始めた。都庁で開かれたイベントでは、舛添要一知事が「東京の誇りを担い、魅力を世界に発信してほしい」と激励した。
おもてなし東京は現在1300人が登録し、毎週金曜から日曜、新宿駅西口周辺と上野駅周辺で活動する。都は今後、人数や活動場所を増やす予定。 (産経ニュース 6月19日)

外国人の一定層は、勝手の分からない日本において、「案内してくれる人」を求めています。
日本人の一定層も、見ず知らずの海外に行ったときに、ガイドを付けたいなと思うのと一緒です。

ましてや築地はごちゃごちゃしていて、個人で観光するにはなかなか難しい観光地です。

それにも関わらず、東京都は、
築地場内においては「勝手にみなさい」と突き放してしまっているのです。

「お・も・て・な・し」

「オモテナシ??」

この規制は、単に、場内の秩序維持が効率的に出来ないだけでなくて、
外国人のニーズにも応えてあげていないのです。

それと同時に、せっかく顕在化しているニーズに応えていないという事は、
大事なビジネスの機会も同時に失ってしまっているのです。

ガイドを許可すれば、
外国人はガイドに対価を支払うことで、日本にお金を支払ってくれます。

また、ガイドに研修を義務付けたり、登録制にすることで、
東京都としても収益を得るチャンスだってあります。

もったいない。その一言です。

「観光立国」を目指すのであれば、
国として、自治体として、どのように訪日客のニーズに応え、
どのようにマネタイズしていくのかは、考えていく必要があります。

今、出来ていないという事は、
その分伸びしろがあるということです。

 

地域と観光事業者が協力してお迎えできる体制を

東京都と築地が決めた解決策に違和感を感じるは事実ですが、
元をたどれば、観光客がその地域の事業者の邪魔をしていたという事も、
今後、観光産業を興していく上で忘れてはいけないポイントだと思います。

外国人観光客は、「爆買」のニュースに代表されるように、
外国人消費は、地域事業にとっても、大きなチャンスです。

ただ、一方で、地域と観光が、ボタンを掛け違えると、
負のスパイラルにはまってしまうこともあります。

観光事業者がその地域に外国人を連れていくとともに、
日本のマナーや歴史、文化等を教える。
地域は来客を温かく迎え入れ、両者が協力して、外国人に楽しんでもらう。

観光立国を目指すうえで、地域と観光事業者の相互理解と協力は不可欠です。
そのためにも、
地域と観光事業者を交えたコミュニケーションがもっと必要になってくるんだと思います。

僕たちも、食べ歩きツアーをする際、商店街の方に温かく迎えてもらうことで、
外国人のゲストがとても満足している姿を目の当たりにして実感するところです。

これからも地域とのコミュニケーションを大切にしながら、
外国人観光客をお出迎えしていきたいと思います。

日本の観光はこれからです。

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(参考)
最近、
デービッド・アトキンソンという
日本を愛するイギリス人アナリストが書いた「新・観光立国論」という本を読んで、
「外国人が見た日本の違和感」に背筋が伸びる思いがしています。
そんな影響を受けた視点でふと身の回りを見たら、目の前に今回の件がありました。
本の感想はまた別途書ければと思いますが、
お客様の視点で考えることの大切さを改めて感じています。

デービッド・アトキンソン 新・観光立国論
デービッド・アトキンソン 新・観光立国論

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日系損保、外資系コンサルティングファームを経て、2012年、結婚を機に夫婦で365日世界一周。その後、日本と世界をつないで楽しい世の中を創れないかと観光で起業。日々試行錯誤中。趣味は旅行と食べ歩き。世の中にちゃんと付加価値をうみだしていきたい。ワクワクする世界を創っていきましょう。

2 Comments

  1. 築地で日々仕事をしている人間ですが、こういう記事を見ると本当に腹立たしく思います。
    私たちは築地で、安心安全な食を送り出すという仕事をしている。そこへほこりだらけの観光客とやらがやってきて、商品をさわり、大声でしゃべり、つばを飛ばし、通路をふさぐ。
    衛生に気をつけていても、傍若無人な人間はお構いなしだ。
    ガイドが云々ではない。そもそも、築地市場は「観光地ではない」。見に行きたい、需要がある、そういわれればどんなところでもそこは観光地なのか?あなたの家の寝室を、トイレを観光客が見たいといえば案内するのか?極論に過ぎないかもしれないが、そもそも観光を目的にしていない場所に、観光客とやらを連れてくることに無理がある。私たち築地の人間は、誰も観光客を呼んでもいないし、誘致もしてない。自然発生的に集まってしまったから、仕方なく、本当に仕方なく相手をしているだけだ。
    築地は、お客様を通す「客間」ではない。バックヤードであり、台所だ。
    レストランに行って、わざわざ厨房を案内するか?どんな雑菌が付いているかもわからない人間を、厨房の中を案内するコックはいないだろう。
    根本に立ち返って考えて欲しい。
    観光するべきではない場所だと説明するのも、観光ガイドの仕事ではないのか?
    見たい見たい行きたい行きたいのニーズに、時にはNOを伝えることがあるべきではないのか?

    それでもどうしてもやりたいというのなら、あなたの自宅もプライバシーも全部観光客が見たいなら開示しますよ、構いませんよ、そこまで言い切れる覚悟ができたらもう一回記事を書いて欲しい。
    もう一回書きます。私たちは見世物じゃない。

    • >築地の住人さん、
      ご意見、本当にありがとうございます。

      私の記事が不十分な部分もあり、腹立たしくさせてしまい、大変申し訳ありません。
      私は、観光は地域・事業者の方々と共生があってのものと思っておりますし、そうでないと、誰もハッピーではないと思っています。

      若干、記事の補足を2点ほどさせてください。

      ここで一番に論点にしたかったのは、観光を認めるかどうか、より、
      ツアーは禁止だが、勝手に観光客が入るのは認めている不自然さです。

      例に挙げていただいているレストランを例にとれば、
      勝手にお客様が厨房を見るのは自由だけど、
      注意事項等を説明する人との同伴は認めない、ということです。

      引っ越し前の内見で、勝手にみてくれるのはいいけど、
      不動産会社の人同伴は困ります、と同じだと思います。

      どの食品工場であっても、来客を消毒させたうえで施設の人が工場内を案内する、あるいは、来客用のルートを作るのと同様に、
      築地も見せるのであれば、働く人の邪魔にならないように、統制を取るべきだと思っています。

      その役割を、ちゃんと市場が教育したガイドが担えばいいと思っていますが、
      ガイドを締め出して、勝手に「雑菌がついているかもわからない人間」を傍若無人にさせておく現状。

      現状、ガイドの人は、案内はできない(NO)といい、
      外国人観光客だけで場内を回っていることもあるようです。

      おかしいなぁという単純な感想です。

      もう一つはまた別の視点ですが、今後日本の人口は減っていきます。
      これまで日本を支えてきた製造業も、海外資本に買収されたりと苦戦を強いられています。
      築地のお店も閉まっていったり、地元の商店街もお店を閉じたり…。

      正直悲しい状況です。

      そのような状況下で、日本は今ある資源を活かして生きていかなくてはなりません。

      その一つが、観光もそうですし、「築地」というブランドを強くした水産物の輸出も一つだと思います。

      これまで商業の土地だった築地を、東京都は観光資源としても活用していくべきではないかという点もあります。

      ただ、観光資源=見世物で、観光客は荒らして邪魔して帰っていくというわけではありません。
      もっと「築地」をうまく見せていくいい機会だと思うんです。

      せっかく海外からあれだけ多くの人が日本に、そして築地に来てくれています。
      もしあれだけ多くの人にブランディングしてこうと思えば、莫大な予算がかかります。

      来てくれた人に、どう築地の凄さを伝えるか。
      その機会を逸していることにもったいなさを感じます。

      昨年公開された築地ワンダーランドを見て、
      目頭が熱くなるくらい築地が日本にあることを誇りに思いました。

      ただ、今、築地に来ている多くの訪問者は、
      「ただでかい市場だなぁ。すごいなぁ」その程度の感想しか持たないでしょう。

      もっとその裏にある、仕組みだったり、心だったり、
      そういうものを伝えていけば、きっとその人が「築地」ブランドを世界に広める役割を担ってくれるはずです。

      それができていない。

      観光客は、場内の方からしたら、確かに直接のお客様ではないかもしれません。
      でも、お客様のお客様である可能性はとても大きいです。
      1個人、1事業者として、そのメリットは見えにくいかもしれませんが、
      どうその機会を活用していくかは検討の余地があるなぁというのがあくまで個人的な感想です。

      何もすべてを見せろと言っているわけではありません。

      皇居だって、東御苑を開放したり、一般参観を行っています。
      事業者の邪魔にならないよう、築地の魅力を伝えることを考えれば、
      観光客にとっても、そこで働く事業者にとっても価値のある事なのではと思うのです。

      長文で失礼しました。

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