インバウンドに取り組むなら必読「新・観光立国論」

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この本を手に取った時は、目から鱗でした。

「日本の『おもてなし』は凄い」「交通機関の時間が正確で日本はすごい」「日本は治安がいい」「不便なのはwi-fi環境だ」そんなメディアに踊る言葉を眺めながら、違和感を感じてた自分にとって、その違和感を言語化してくれたのがこの本でした。

「そうそう、そうなんだよ!」

今後、観光立国を目指すうえで欠かすことのできない「外国人目線」を現在の「日本人目線」との違いで分かりやすく説明してくれます。
訪日旅行(インバウンド)ビジネスに取り組むなら、何よりも読んでおいた方がいい一冊です。

かれこれ、最初にこの本を手に取ったのは7月でした。
その時に、衝撃を受け、2回繰り返し読んで、
ブログも書こうとその時思ったのですが、手が動かないまま3か月経過してしまいました。

何も書かないより、箇条書きでも残した方がいいかと思い、
特に刺さったことを書いておこうと思います。

観光立国になる為には4つの条件が必要不可欠であり「気候」「自然」「文化」「食事」である。

複数の観光を提供できる国こそが「観光大国」になりえる

日本は4つの条件を満たす稀有な国である

観光立国になるこの4つの条件という整理が個人的には一番大きなポイントでした。
この4つ、これだけで「その国に行こう」って思える要素だからです。

「あー確かに、あったかい国目指して、移動したなー。アツい太陽に海。最高だよな。」
「自然遺産って感動したし、ウユニみたいな自然もとめて旅したなー。」
「各地でなんだかんだ世界文化遺産見たし、教会やモスクも目的地の一つだったな。」
「パスタを食べたくて、イタリアに行っちゃったな。」

実体験を踏まえても、それは強力な集客力を持ったコンテンツです。
強いて個人的に付け加えるなら「スポーツ」。

「MLB見にアメリカに行こう!」
「バルサ対レアル見たいからスペインに行っちゃおう!」
「ロッキーにスノボすべりに行ってみたいな」

これも実体験を踏まえての感覚。

「気候」「自然」「文化」「食事」「スポーツ」
この5つは強い集客力を持ったコンテンツだと思うんです。

「いやいや、『タイに行きたいな。安いから。』ってな感じで、安さも重要だよ。」という意見もあるかと思います。
もちろんコストも大事ですが、でも安いだけならタイだけじゃなく、他の国も沢山あります。
それでもタイを選ぶ理由は、「気候」「自然」「文化」「食事」が揃っているからだと思うんです。

「いやいや、なんだかんだで距離って大事でしょ。アジアには行くけど、ヨーロッパ遠いじゃん」
もちろん距離も大事です。でもそれは制約条件であって、「近いから行く」とはなりません。
グアムに行くのも、「ハワイより近い」から行くことはありますが、
やはりそこには、「暖かい気候と海がある」から行くのです。

日本は、少なくとも4つ(5つ)の条件を満たしている中で、正しい打ち出し方をできているのでしょうか。

よく、日本は「四季」が明確に分かれている唯一の国だという話を聞きますが、欧州の人間からすれば、これはあまり納得できません。このような話がまかり通っているのは、京都あたりで囁かれていた「俗説」がいつの間にか正しいこととして日本全国に広がったのではないかと思っています。

なに?四季って別に珍しくないの?確かにそうっちゃそうだよね。

一つ一つ納得させられました。
日本の観光地見ても、外国人に人気の出ているところを見ると、
ニセコ、高野山、飛騨、瀬戸内・・・この要素をしっかり押さえた観光地であることが分かります。

この4つ(5つ)を日本はどこまで押し出せているか、というと改善の余地は大いにあります。

一方で、オリンピック招致が決まってから、いやとなるほど聞いたおもてなし。

日本のみなさんが思っているほど、「おもてなし」は世界から注目されていない

日本人が考えるほど、各国は日本のサービス品質の優位性を必ずしも認めているわけではない

日本人ですら「この接客大丈夫か」と思う場所は多々あるなか、
「日本のおもてなしって凄いんですよ」とアピールすることって結構恥ずかしいよな、と思いました。

それと同時に、
「あの国のホスピタリティが良かったからまた行こう」ってなかなか実体験がないんです。

たしかに、
「あの国のあのホステルのあの人は感じ良かったからまた会いたいなー」はあります。
ただ、それって国がどうこうする話でもなく、国がアピールする話ともまた違うかなと思うのです。

「治安の良さ」をアピールすることもありますが、
「治安が良いからあの国いこう!」ってなったことありますか?

「悪すぎたらあの国は避けよう。」とはなりますが、
良かったからあの国行こうってならないなと思うのです。

そういう視点で振り返ると、日本が集客の為にPRしていることって、
本当に集客につながっているのだろうか、と考えさせられました。

もちろん、和食のPR等々、日本も正しい方向には動きつつあるのだと思いますが。

 

自分自身の感覚に照らし合わせればわかることなのですが、
巷にあふれる「一般論っぽいこと」に流されてしまいがちです。

それをこの本はあらためて考えるきっかけをくれたことが本当に良かったと思います。

・・・と同時に、現在、仕事で食べ歩きツアーを旅行者に向けて提供していますが、
「食事」という方向性だからこそ評価いただいているのかと再確認した次第です。

 

日本の常識は、世界の非常識。

大事なのは、お客様のニーズの本質をしっかり捉えたサービスの提供です。

その認識で、観光に取り組んだ先に、より明るい未来が待っているのだと思います。

 

インバウンドの観光に取り組む方は、
デービッドアトキンソンさんの「新・観光立国論」おススメです。

デービッド・アトキンソン 新・観光立国論

新・観光立国論

デービッド アトキンソン
東洋経済新報社

 

一つ一つの内容も納得だったのですが、
この本が「日本人によって書かれたもの」ではなく、
デービッドアトキンソンさんという日本の心を持った「外国人が書いている」という事も
説得力を増している要因だと思います。

元ゴールドマンサックスのアナリストにして、
現日本の美術工芸工事の会社「小西美術工藝社」の社長。

故に、文化財の維持・観光資源として活用に重きが置かれているパートもありますが、
全体を通じてとても刺激があり、学びの多い本でした。

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