過労死は「長時間労働」が悪なのか。

広告代理店の新入社員が過労死したことで、俄かに働き方に関する話が再びニュースを賑わせるようになりました。

「死ぬことなんてなかったのに」「死ぬくらいなら辞めればよかったのに」という無責任な話をするつもりもなく、その決断に至ってしまったことは本当に本当に悲しいことです。

一方で、こういう事が起こってしまうたびに、「残業時間の過少申告」「長時間労働」が取り上げられ、「長時間労働=悪」と盲目的に決めつけてしまう風潮には疑問を感じます。

本当に「長時間労働」が悪なのか。

「過労死を受けて、22時に一斉消灯」「22時から5時は、会社メール等の使用禁止」

世論がそれを求めているのかもしれませんが、海外の企業買収も進めている会社が、
そんな制約をかけるなんて、どこかにしわ寄せが来ること間違いありません。

そして、限られた時間で、変わらぬ成果を求められるプレッシャーは、
「過労」は改善しても、「うつ病」には悪影響のケースもあります。

問題は「長時間労働」ではないところにあるんだと思うんです。

「長時間労働」を覚悟して入社をする人もいる

自分自身が社会人生活をスタートした会社も、
入社する10年前くらいは相当体育会な会社でした。

合併や社会的風潮を受けて、だいぶマイルドな社風になりつつありましたが、
上司や先輩を見ているとそういう風土で鍛えられてきた人が多くいる会社でした。

そんな会社も、2005年当時、もう既に21時消灯が本社では徹底されていました。

その時の自分はというと、体力を持て余していました。
21時に会社を出て、社内外の人と飲んだり、走ったりして、充実させようと必死でしたが、
自分の中では先輩たちをみながらどこか焦りを感じている部分もありました。

チキンな自分は、貯金を先に作って、それをうまく活用して立ち振る舞いたいのに、
先輩や同世代の人と比べて、こんな時間の使い方で果たしていいのだろうか、と。

営業に異動するとさらに、その思いは顕著になります。

あと1時間、あと2時間、時間をかけて、提案を考えられればもっといい提案が作れるのに、
電気は消されてしまって、その時間が取れない、この状況は何なんだろう、と。

「なんで転職したんですか?」と聞かれたときに、
「24時間働きたかったから」と冗談で答えることもありますが、
なまじ冗談ではなく、もうとにかく働いて戦闘力を高くしたい気持ちで転職に踏み出しました。

そんな自分が世間一般だとは思いませんが、
自分の周りにいる若い体育会系大企業の意識高い人たち・外資系企業で働く人たちを見ると、
時間を問わず、若いうちに自分を鍛えたいと思って入社している人がそれなりにいます。

もちろんその中で会社と合わない人もいますが、
多くの人はその中で楽しみ、もまれ、成長し、価値を出しています。

別に今の経営者としての立場ではなく、
25歳だった自分の立場からして、「長時間労働は禁止!」と言われてしまうと、
病みはしないけど、人生を豊かにできなかっただろうなと思うのです。

「生産性が改善する」という大義名分の意味

「長時間労働=悪」という話には、大体セットで「労働生産性が低い」という話がついてきます。

「長時間労働すると、効率が悪くなるよね。だから生産性が低くなるんだ。」

なんだか、もっともらしい話なので、
この大義名分を盲目的に受け止めがちですが、ここをしっかり考えるべきです。

労働生産性の定義および仕事の内容とフェーズ次第で、正しいとも間違っていえるとも言えます。

労働生産性も、
1時間の生産性なのか、1日の生産性なのか、1週間、1か月、1年、3年なのかによって、
大きく変わってきます。
効率の話をしているのか、絶対量の話をしているのかの違いが出てきます。

仕事の内容とフェーズも、
単純作業なのか、頭を使って考える仕事なのか、
覚える段階なのか、自分で組み立てていく段階なのかによって変わってきます。

記事にコメントを寄せる人の多くは、働き方をもう身につけたデキる人です。
そんな人たちは、確かに、工夫して、短い時間でも変わらぬ成果を出すこともできるでしょう。

日本企業は、仕事の切り分け方・組み立て方・工夫が下手で、
管理職の人たちに相当な改善の余地があるのも事実だと思います。

でも、1年目の自分を振り返ってみると…
まだ何もわからな中で取り組んでいるし、体力もあるし、
21時退社が23時退社になれば確実に生産量は増えた自信があります。

コンサルに転職してからも、
長く働くと、1時間当たりの生産性は確実に落ちますが、
でも1日、1週間でも生産量は確実に増えました。

確かに、
3か月くらいなら頑張れるけど、相当な長時間労働が4か月目に突入すると、
1日あたりも1週間当たりも生産性は落ちるという限界も感じました。

要は、常態化すると生産性が落ちていくのは事実だし、
生産性改善のための工夫をしなきゃいけないのは間違いないのですが、
メリハリを利かせることで、長時間労働で生産性はあがる一面もあると思うのです。

長時間労働より、人に認められるかどうかメンタルへの影響大

「21時に消灯で帰らなきゃいけないから、自分の100%の力を出せていない」

個人的な精神衛生上、何とも言えない状況でした。
会社のルールに従っているんだけど・・・、それで会社はいいのかもしれないけど・・・、うーん。。。

社会人生活12年過ごす中で、世間一般が言う長時間労働もしてきましたが、
その中で本当に精神的につらい期間が3か月間ほどありました。

どんな時だったかというと、長時間労働だったことはもちろんですが、
それにもまして、何もアウトプットを出せなかった、付加価値を出せなかった時でした。

時間をかけるんだけど、糸口が見いだせず、あの時は本当に苦労しました。
誰からも、ありがとう、とか、いいね、とか言われず、辛かったなぁ。。。

逆に、もっと長時間労働していた期間もありましたが、
「お前のおかげでなんとかなってる」「大変だろうけどありがとう」と言ってもらえてた時は、
綱渡りでちょっと胃がきりきりしつつも、精神的には健全な状況でした。

人にもよるんでしょうけど、「承認欲求」を満たされることって、とても大事だと思うんです。
また、サポートされてるなっていう安心感って、精神的に大事です。

今回の過労死もニュースを見たときに、
長時間労働よりも、部署での扱いの方が重症だな、と感じました。

過労死を減らすなら長時間労働禁止は有効だけど・・・

このように、長時間労働が、過労死に直結するわけではありませんが、
一方で、過労死した人は多くが長時間労働であったというのもまた事実だと思います。

過労死⇒長時間労働 である場合、

ちょっと数学チックに考えると、逆は正しいかわかりませんが、対偶は成り立ちます。

長時間労働⇒過労死・うつ病 は逆で正しいかわかりませんが
長時間労働をしない⇒過労死しない これは対偶で成り立ちます。

だから、過労死をなくすためには、長時間労働に制限をかけるというのも、
あながち間違った策だとは思いません。

結局、過労死って、メンタル面もフィジカル面もやられてしまった結果です。

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「過労死を減らすため」なら労働時間削減が確実な一手でしょう。
物理的に見えやすいので、規制をかけやすいというのもわかります。

でも、単にプレッシャーが増えるだけだと、
働く人の満足度や生産性は落ちるデメリットも抱えますし、
うつ病は増える可能性もあります。

もうちょっと自由度を持たせて、両立できるのが理想かと思いますが、
そこまで規制しないと行動に落ちないのが残念な限りです。

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日本企業におけるダイバーシティの弱さ

男女平等が叫ばれて、ダイバーシティという多様な働き方を認めようとする動きも生まれました。

でもなんだか日本は規則上での男女平等は進んだものの、
モラハラ・セクハラ・パワハラ等の問題が大きくなる中で、
どんどんお互いの相互理解が疎かになっていっているように思います。

結果として、相手がどんな働き方をしたいと思っているのかもわからず、
そこを尊重しようにもできない状況になってしまっている気がします。

長時間働きたい人には働かせて、働きたくない人はその時間内で働くようにして、
待遇は、労働時間じゃなくて、能力・付加価値・生産性に応じて決定する、というのが、
個人的には理想だと思っているのですが、実際運用するのは難しいことでしょう。

企業も大きくなってくると、個人の倫理観に任せてガバナンスを利かすことができなくなり、
結果的に、規則で縛るしかないというのが今の状況だと思います。

企業および個々人のマネジメント力が理想に追い付いていないという事でしょうか。

求められるのはセーフティネットの存在とコミュニケーション設計

結局のところ、長時間労働は悪じゃないけど、
過労死を減らすためには、規制をかけることはやむなしかなという気もします。

ただ一方で、選択の自由はあるべきだと思うし、
働きマンの受け皿が外資系企業かベンチャーなのかなーというのは何とも言えず、
もう少し幅を持たせられてもいいのではと思います。

また、注目されない中堅・中小企業において、
働かされマンがこっそりこき使われるんでしょうね。

労働基準監督署が入る場合の多くは、内部通報だという話を聞きますが、
最後のセーフティネットを国として企業として整えておくだけじゃ難しいものでしょうか。

そして、企業が考えるべきは、長時間労働禁止や生産性の向上もさることながら、
社内のコミュニケーションをもっと設計していくべきだと思うのです。

就職活動時からして、待遇や良い社風については積極的に発信されますが、
あまり具体的な働き方の実情などはコミュニケーションされません。

入社してからも、上下4歳くらいの付き合いしかない大学生から、
上は40歳以上離れた人と付き合う社会人になって、コミュニケーションの取り方もだいぶ変わるのに、
背中を見て学べ的対応で手を付けていない企業が殆どです。

人格攻撃しない基本的なコミュニケーション能力の教育ももちろんだと思いますし、
言いたいことをちゃんと発言できる雰囲気・文化の醸成こそが、
ひいては、生産性も向上し、うつ病などとは無縁の活き活きした会社になるんだと思ってます。

過労死する人が出ない世の中ではなく、
みんなが自分の力を出し切って楽しんでいる世の中を目指していきたいところです。

 

 

自分も圧の強いコミュニケーションをしがちなので、自戒の念も込めて。

「言いたいことを言ってくれた方が、裏で思っているより100倍いい。」
そう思っているので、たまに言い過ぎちゃいますが、ホントに言ってほしいなと思っています。

2310

日系損保、外資系コンサルティングファームを経て、2012年、結婚を機に夫婦で365日世界一周。その後、日本と世界をつないで楽しい世の中を創れないかと観光で起業。日々試行錯誤中。趣味は旅行と食べ歩き。世の中にちゃんと付加価値をうみだしていきたい。ワクワクする世界を創っていきましょう。

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