インバウンド領域において、自分たちでツアーを催行する側、前職での知見を活かし、
調査系の事業にも携わる機会をいただいています。
「多くの人がwifiに不満を持っている」「日本食が旅の目的の人が多い」といった、
so whatの分かりづらい調査結果に始まり、
「中国人は買い物。欧米系は体験だ」なんていうプロトタイプにあてはめたものまで、
なんだか重複した調査結果に溢れているのが、新興マーケット「インバウンド」です。
よく「国別の傾向が知りたい」というリクエストも受けますが、
いろいろ調べた結果、国籍問わず押さえておくべきポイントが見えてきました。
流行るために押さえておくべき8つのポイント
自分自身、長期の海外旅行に出たり、事業を始めるまでは、
国ごとに大きな違いがあると思っていました。
でも、1年の世界一周旅行で感じたのは、人間みんな一緒だな、ということ。
綺麗な景色はみんな感動するし、
かわいい子を見ればみんな嬉しくなるし、
美味しいものは、やっぱ誰にだって美味しい。
もちろん育ってきた環境の違いで、
食事に制限があったり、よく目にしてきたものが違うから、
一緒ではない部分もあるけど、国の違いというより、環境の違い。
2年前から始めた東京・京都でのツアーに加え、
この1年は3回ほど外国人と泊まりで観光地や体験系コンテンツをご一緒する中で、
やっぱり、人間みんな一緒だなー、と感じました。
「どの国の人は何に関心があるんだろう」って思ってみるけど、
やっぱ面白いものは、みんな楽しい。美味しいものは、みんな美味しい。
「そこに何があるんだろう。」「外国人は何に惹かれるんだろう。」とずっと考えました。
「農家民泊」「漁業体験」とかいうと、正直あまり興味を示さないのに、
いざ行ってみると、どの国の参加者にも、評価がすこぶる高い。
「何なんだろう、これは。」チームで考え続けた結果、現時点で見えてきたのが次の8個の原則です。
多くの場合、日本人にウケるものは外国人にもウケるし、
外国人にウケるものは日本人にもウケます。
「モノ消費」から「コト消費」の流れを、
これからは「体験系が来る」と騒ぐ最近の風潮には疑問だらけなのですが、
モノだろうが、体験だろうが、これを押さえて磨いていけば、きっと流行ります。
あとは、「うちはそもそも無理だ」と決めつけず、
磨き続ける想いが、パッションが、愛が、あるかどうかだと思います。
Simple
「ひと言で魅力的な特徴を表現できる」
これが1つ目です。
日本はどこに行っても、
「うちは温泉がある」「桜が綺麗だ」「景色がいい」「歴史がある」と、
自分のことをPRしますが、日本全国一緒すぎて、その地の魅力がわかりません。
いかにその魅力を形容するか、が大事です。
別に日本一の富士山のような魅力なんてなくてもいいんです。
「日本で一番人口の少ない秘境の温泉地」など、
「お、気になる」と思わせる魅力をシンプルに伝えることが大事です。
Photogenic
「写真・映像映えする」
これが2つ目です。
SNSが主要な情報源となっている今、写真・動画は必須です。
もちろん絶景があればなお良しですが、
いい写真が撮れるよう展望台を設けてあげるとか、ライトアップを始めるとか、
今ある素材を活かしながらも、よりフォトジェニックを意識することはできるはずです。
「撮影禁止」となっている施設も見ますが、
本当に撮影禁止にするべきなのか、もう一度考えてみてもいいと思います。
Wow
「驚き・発見がある」
これが3つ目です。
人生山あり谷あり。
そのメリハリや抑揚が、その旅をより面白くします。
登山をして、展望台にたどり着いて、その眺望を見た時、
「おぉ〜」ってなりますよね。
リフトで登らないからこそ、感じられるWOWがそこにあります。
同じことを伝えるにしても、どうストーリーラインを構成するか。
それによって、感じるWOWは変わってきます。
淡々と話す人と、抑揚があって、オチのある人、どっちの人の話を聞きたいですか。
それと一緒です。
Fulfillment
「充足感が得られる」
これが4つ目です。
片道1時間超かけて行って、確かにフォトジェニックだし、楽しかったけど、
30分で回り終わって、え、これだけ?ってなってしまうと、わざわざ足を運びません。
運んでも、満足度はあがらない。
東京周辺の酒造見学もその傾向がありますが、
地方に行くとどの観光地でもこのリスクをはらんでいます。
その場所自体を磨き込んで、30分でも行ってよかった!って思えるくらい磨き込むか、
周辺の施設等と連携して、他の楽しみ方を提案し総合的に満足してもらうか、
解決策は、いくつかあると思います。
Repeatability
「次来る人も楽しむことが出来る」
これが5つ目です。
このご時世、口コミで評判は広がっていきます。
そんな中困るのが、1回だけや不定期の企画です。
せっかくいいものでも、伝わらなきゃ、人は来ない。
「試しに一回やってみる」では何も始まりません。
最低でも半年くらいは続ける、その継続性が大事です。
インバウンドは、どうしても情報の伝達に時間がかかります。
日本人が海外行って、あそこよかったよって周りに言いふらしても、
周りの人がその国に、じゃぁ来週いこっかな、ってならないですよね。
収支を考えると「人が集まったらやる」って考える人もいますが、
参加者が1人で確実に赤字でもやり続けることが大事です。
実際、それで立上がってきた事例もあります。
月1でもいい。
「毎月第1土曜はやってるよ」そう伝えられることが必要です。
Hospitality
「柔軟性の高いおせっかいが出来る」
これが6つ目です。
あえてお・も・て・な・しとは訳しませんでした。
「おもてなし」という言葉は、
おもてなす気のない人が自己陶酔的に使っているケースも多く好きじゃない。
求められるのは、もっと相手のニーズを踏み込んだ、一歩踏み込んだホスピタリティです。
「おもてなし」より、「おせっかい」という方がニュアンス的には適切です。
遠慮はいらない。
旅行に行って、現地の人と話すと、なんだか楽しいじゃないですか。
言葉が通じなくても。
日本語でもいいから話しかけてあげることで、
楽しそうにしている外国人をたくさん見てきました。
Universal
「多言語フレンドリーである」
これが7つ目。
多言語フレンドリーって言っても、
「英語をみんな使いましょう!」っていう話ではありません。
対応の一つは、多言語化だと思うのですが、
それ以外にもピクトグラムを使うとか、手話でも伝えるとか、
非言語でも楽しめるものにするとか、いろいろな対策が考えられます。
「日本語がわからないと楽しめない」
「日本語では、20行くらいの説明が書いてあるのに、英語は2行だけ」
そんな状況だと、逆の立場でも、なんだかなーって感じるはずです。
Access
「情報を見つけやすい・行きやすい」
これが8つ目です。
若干他のものと毛色が違います。
これだけやっても、全然流行らない。
「情報があるから行く」「行きやすいから行く」とはなかなかなりません。
ただ、他のポイントを押さえてた時に、ここを改善すると、さらに流行る。
田舎に行くと、日本人でもアクセス情報がなかなか見つけられないんです。
特に、バスで行くとかなると、結構お手上げです。
ネットで検索した時に、
どういうワードで検索されて、どういうページが表示されているのか、
知っておくのも大事です。
8個の原則がわかると磨く方向性が見えてくる
そんなこんな8個のポイントを紹介してきましたが、
実際の観光コンテンツをこの原則に基づいて分析してみました。
例えば、スノーモンキーで有名な地獄谷野猿公苑を見てみます。
- Simple:
「SNOW MONKEY」その一言だけでキャッチーです。 - Photogenic:
温泉使ってる猿の写真いいですよね。みんな写真撮ってます。 - Wow:
温泉入ってる猿が見えた時の達成感あります。あえてちょっと遠くから歩かせるのが◎。 - Fulfillment:
どうでしょう。。。強力コンテンツですが、単体だと少し弱さもあります。
長野・小布施・渋温泉などが充実してくるとともに、
スノボとの組合せがうまく回ってきている気がします。 - Repeatability:
冬になると、スノーモンキーに行く人が言っていそういます。
ただ、餌を入れたりと地道な努力をしていることも大事です。 - Hospitality:
行ったときにあまり現地の人との絡み等々ありませんでした。 - Universal:
言わずもがな、言語ができなくても楽しめます。 - Access:
立地はあまり交通の便がいいとは言えないものの、
情報提供があればここまで人は来るんだなと思いました。
人が集まってくることで、ツアーも造成されたり、交通の便も改善されてきました
このように、今あるコンテンツをあてはめてみると、
どこに課題があるのか、地域単位でも個別コンテンツ単位でも把握することができます。
スノーモンキーであれば、周辺の施設の充実や交通の改善は課題でしょう。
また、写真や驚きって飽きもあるので、どう継続させていくかも今後の課題の一つとして見えてきます。
ついつい地方で観光を検討すると、交通の便の悪さを理由にしてしまいがちですが、
ぶっちゃけ、いいモノがあれば、人はどこまででも行きます。
ボリビアのウユニ塩湖だって、
地球のうらっかわのしかも行きづらいところですが、多くの日本人が訪れているわけです。
8個の原則といったものの、まずは、どうすれば満足してもらえるかに焦点を当てて、
4つ目までのポイントをひたすら考えて磨いていけば、
もっと人を惹きつける魅力的で面白いコンテンツはたくさん創れるはずです。
その時に、想いや愛がない人がやると、磨ききれず、結局は責任を他に求めてしまうのです。
だから、インバウンドには愛が大事。
実務を踏まえ、とある調査を通じて見えてきた現時点での結果なのですが、
インバウンドに取り組む人の参考になればと思い、公開してみました。
P.S.
税金使った調査ってものすごい行われているのに、
その報告書ってごくごくクローズなところでしかお目見えしてないのって、
なんだかものすごいもったいないことだなと思います。
報告書を作ることが目的になっているような事業をなくすためにも、
報告書を全部公開したら、もう少しみんな背筋が伸びるのではと思ったりします。
P.S.2
REVAMPさん、東北の大学生起業家ウラノミさんと一緒にPJTを進めましたが、楽しかったです。
もっともっと現地を巻き込んでいけたら良かったかな。
また前向きに変えていこうという意識のあるいろんな組織・団体とご一緒していきたいです。
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