日本の『チップ』文化に対して思うこと

観光雑感

「チップは含まれてないことを明記して欲しい」
「チップを払うよう誘導して欲しい」

そうした要望をいただくことがあります。

「日本にチップ文化がないなんて嘘、日本はチップ文化だ」

間違ってはいないですが、そこまで主張すると誤解を招きそうです。

ノットワールド時代に始めたTokyo FooDrink Tourでは、「一旦はチップを断って欲しい。ゲストの気分を害することが目的ではないので、伝えた上で是非というのであれば受け取っていい」というスタンスでした。

改めて個人的に感じていることを書きたいと思います。
(会社の方向性というより、あくまで個人の考えです。)

チップってモチベーションには間違いなくなる

ツアーを終えたときに、はじめてチップを頂けそうになった時のこと

嬉しかったと同時に、どうしていいかわからなくてどぎまぎしちゃったことを今でも覚えています。

「いやいや、これでむしろ一杯飲んでもっと日本を楽しんで」
「チップはいいから、本当にレビューを書いてくれたらそれが一番最高だ」

そんなやり取りをした気がします。
経営者として後者はお金以上に嬉しいことで、本音そのものですが。

それでも受け取って欲しい、と言われて受け取ったこともあれば、遠慮したこともありますが、一つだけ言えることは、楽しんでもらえたことの証でもあり、嬉しかったということです。

自分ではないですが、有(@yukono1017)は「ホテルにワインを置いておいたから受け取って欲しい」みたいな話もあったりもしました。

なにそれ、おしゃれ!って思ったりもしました。

ただ「インド」のようにはなって欲しくない

「一旦は断って欲しい」という話をしていましたが、チップに対しての賛否に関して結論から言うと、お互い気持ちがいいのであれば全然いいんじゃないか、と思ってます。
「お互い気持ちがいいのであれば」が大事です。

自分がチップにどちらかというと否定的な感情を持っているのは事実です。
それは、海外を旅行したとき、チップを通じて肯定的な体験をしたことがないからです。
むしろ、ネガティブな印象が強いのです。

「この体験にはチップは不要」と謳われているのに、最後にチップを請求されて、払わないと、態度が急変する。

そんなことがインドをはじめいくつかの国でたびたびありました。楽しかった思い出も台無しどころか、国の印象も悪くなります。(インドはそれも含めてカオス的なのが魅力として成り立ってもいますが)

自分自身、これまで多くのツアーに同行してきましたが、ツアーの終盤になると、すすすっと自分のところに来て「日本はチップを払う必要があるのか?」ということを聞かれることがありました。

旅行の時に「チップ」は時にストレスにもなります。

「頂けたら大変ありがたい」ものではあるものの、「払ってもらえるのが当然」と接遇側がならないで欲しい、とは願っています。

日本側の感じ方も人それぞれ

加えて、事業者視点で行くと、チップに対するガイドの方々の考え方の違いがあることも感じています。

海外(特にヨーロッパ)では、チップを前提としたフリーツアーというものがあります。

「このツアーは無料のツアーだけど、無料なのには理由がある!もしみんなが参加して満足してくれたら、最後にチップを払ってくれ!・・・え、いくらかわからない?その時は俺に聞いてくれ!(笑)」みたいな感じで始まるツアーです。

宿泊施設を運営している先輩から、「フリーツアーやったら?」と7ー8年ほど前に情報をいただき、検討したのですが、結果的には形にならずでした。

固定でも報酬が欲しいというのもそうでしたが、「チップを求めない姿勢が好きだったのに」的なコメントもいただきました。

一方で、冒頭のような声もいただく中で、色々考えさせられます。

チップ一つとっても、それぞれの思想があるし、どれが正しい、どれが間違っているというわけでもなく、どれも一つの在り方なんだと感じています。

「お心付け」等の文化の情報発信をしたうえであとはゲスト判断

前段で「日本にチップ文化がないなんて嘘、日本はチップ文化だ」という話を書きましたが、確かに「日本はチップ文化がない」かというとそうではありません。

ゴルフ場のキャディさんに、バスの運転手さんに、、、お心付けという形で渡す習慣はまだ残っています。

「日本はチップ文化だ」と主張する人は、ちゃんと各局面でお心付けを払っているものだとは思いますが、昔に比べ若年層に引き継がれているかというと、割合として減ってきているのでは、と感じています。ここは統計を見ていないので何とも言えないですし、納税上統計等にも出てきにくい部分ではありますが。

ガイドツアーで、お心付けを支払う文化があったか、、、となるとわからず明言できないところですが、そうした感謝の形を示す「お心付け」という文化があった、ということに関しては、情報発信をすることは、ガイドのモチベーションの向上+待遇の改善に繋がるのかなと考えています。

また、ツアーの案内にも、含まれてはないし、払う必然性もないけど、そうした文化もあるし、素直にモチベーションになる、位は書いてもいいのかもしれません。

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長くなりましたが、何が言いたいかっていうと、チップに対しては中立的で、お互い気持ちがいいことが一番だ、と思ってます。

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賛否両論ありそうな話ですし、自分の認識も正しいかわからない部分もあるので、ご意見あればお待ちしております。

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