インバウンドの戦略を考える前に必要なこと

観光雑感

2か月ほど前に、とある自治体の方と打ち合わせをしました

「じゃあ次何か案件があるときにまた打合せしましょう」

そう言って、打ち合わせを終え、
この度ある事業の公示をもって再びコンタクトを試みました

「インバウンドの担当部署が消滅したので・・・」

いや、わかるよ。こんな時期だし。

それも踏まえて最近感じていることをアウトプットしてみます

自分たちの利益を考えればインバウンドに予算をつけて欲しいのだけど、
各地域の将来を考えた時に、インバウンドに手を付ける前に・やめる前に、
やるべきことがあると思ってます

戦略なきインバウンドで良かったこれまで

インバウンドって、これまでちょっとバブルだったんですよ
正確にいうと、中身がないわけではないので、バブルではなく成長が急過ぎました

2003年から2012年の9年で、約200万人しか増えてないのに、
2013年から2019年の6年で、約2000万人も増えてます

複合的な要因はあるかと思いますが、円安の背景に加え、
観光立国を目指し、ビザの緩和等の制度改革、多額の税金の投入等が行われました

結果、物凄い伸びました

ほっておいても伸びてくる、溢れてくる環境の中では、
戦略なんてなくても、結果がついてきました

ましてや2020年オリンピックを控え時間制約もあり、作戦は「ガンガンいこうぜ」だったわけで、
戦略を立てる時間より、スピードを優先させることに意味があったとも言えます

だから、横を見て、みんながやっていることをやれば、
まぁそれも一つの『戦略』だったわけです

マニアじゃないので、そこまで各自治体の観光戦略を見ているわけではありませんが、
ちゃんとしてるなぁと感じたのは2014年の京都の「京都観光振興計画2020」くらいでした

東京ですら、どこに向かってるのかよくわからないし、
富裕層狙うって言って、それっぽい人たちが、それっぽいイベントやって、
商談会出たりしたけど、成果は出てません、、、みたいなことを聞いて、
何だかなぁって感じで。。。

道しるべを失ってしまったコロナ禍のインバウンド

しかしながら、そこにコロナがやってきました

もう笑うしかないくらいの大ブレーキがかかりました

単位:万人

来たものを捌いていればよかったのに、来なくなってしまった
横に倣えをしてれば結果が出て何も言われなかったのに、短期的に成果が出なくなってしまった

「ガンガンいこうぜ」で取り組んできた人たちがいきなりパニックになり、
「いのちだいじに」に作戦を切替えてしまうことは容易に想像が出来ます

ましてや、ただ来なくなってしまったのではなく、
「外国人がコロナを日本に運んできた」という印象付きです

しかも観光公害が紙面を賑わせはじめていたタイミングで

道しるべを見失ってしまった状況においては、
まずは国内の事業者・住民支援にリソースを振り向けようとして、
「インバウンド担当部署を一旦閉鎖する」というのもやむなしかなと思うのです

インバウンドの重要性と盲目的インバウンドの危険性

とはいえ、インバウンドに携わっている身からすると、
インバウンドの国にとっての重要性は訴えていきたいところです

日本人による国内旅行市場も大きいし、インバウンドなんか頼る必要ない、なんて声も聞きます

しかし、先日MATCHAさんのセミナーでフロリダ大の原先生もおっしゃってましたが、
国内観光客は国内での富の移転に過ぎず、
一方、インバウンド客は外貨獲得できる重要な産業なんです

子どもにお小遣い上げても、子どもは潤っても家計は儲からないじゃないですか
両親が外から稼いでくるから、家庭は潤っていくんです

それと一緒

ちなみに4.8兆円ってどんな規模感かを伝えるために、
外貨を獲得できるっていう点で、日本の輸出品目と比較すると自動車に次ぐ産業です

2030年の当初の目標は15兆円を目指していましたし、まだまだ伸びしろのある領域です

インバウンドって国にとって重要なんです!!

!!

そこのところ国も大事だって考えてくれてはいるようで、
今年も多額の税金がこの分野に投資されています

しかし、それが有効に活用されているかというと…

事業者支援っていう意味ではありがたいんですけどね。
冒頭に記載した通り、自分たちの利益を考えるとこの予算は本当にありがたい

ただ、それでいいのかなぁ って感じることも多々あります

道しるべがなく迷子になったインバウンドは、
今改めて落ち着いて戦略を立てる時間を貰えているわけです

にも拘らず、惰性で、これまで同様の事業をこなすことに目が行ってしまっている
緊急で追加予算がでても、とりあえずとって何とか捌こうとしてしまう

案件獲得競争が起きるわけですが、こうした事業って出来レースであることも多々あるし、
平等な事業者支援にならず、一部に再分配されるだけであったり、
レポートを最後納品することが目的化しちゃってるケースも存在します

税金で価値出さずに食べれたりしちゃうと、
勘違いする人・会社が量産され市場が健全に形成されないリスクもあります

使えるキャパ以上の税金をばらまくべきじゃないし、
このタイミングで何に時間を使うかはもっと考えたほうがいいと思うんです

「何のために観光に取り組むのか」からまず考える

じゃぁインバウンドの戦略を立てることがまず必要なのか

国単位で言えばインバウンドはもちろん大事なのですが、
自治体単位で言えば、そこも含めてもっと根元から考え始めたほうがいいと感じています

そもそも、「何のためにインバウンドに取り組むのか」は大事だと思うのですが、
もっとそもそもの話、「何のために観光に取り組むのか」を考える必要があります
もっともっとそもそもでいくと、「どういう街になりたいか」があってこそです

それは、地域として考えていく問題です

そこが腹落ちしていないから、『観光公害』だなんて問題が発生する
ちょっと風向きが変わったら部署を廃止したりしてしまう

もっと「Why」の部分をまずは突き詰めたほうがいいと感じています

  • どんな街にしていきたいのか
  • 雇用を創出したいのか
  • 地域外から経済的なメリットを得たいのか
  • 交流人口を拡大したいのか
  • 関係人口を増やしたいのか
  • 定住者を増やしたいのか

ここを明確にすることで、
「いや、観光じゃなくて企業誘致だよね」とか、
「教育旅行を呼び込んで、農業体験してもらおう」とか、
「移住・定住をベースに観光を組み立てるためにワーケーションだ」とか、
リソース配分の方向性も決まりますし、打ち手にまで軸が通っていきます

そして、自分たちとしては、
「インバウンドで、お金を落としてもらえる取り組みが必要だよね」ってなった時に、
培ってきたノウハウを解決策として提供して対価を貰うのが健全だよなぁって思うのです

自分たちは、
インバウンドのツアー造成・ガイド育成が一番強みのあるソリューションではありますが、
街づくりの戦略からご一緒させていただけるとワクワクしそうだなぁと、
どこか、街づくりの戦略で声かけてくれたりしないかなぁ
これが、最近、感じていることです


余談ですが、やまとごころさんが集計した
2018年度の自治体案件の1位は、情報発信と知ってまたもやもやしてました

インバウンド関連案件数と予算編成時期との関連は? 入札情報から読み解くインバウンド業界 | やまとごころ.jp

めっちゃお金使ってPRすれば、短期的には、訪問者は増えると思うんですよ
めっちゃ綺麗な動画をつくって、自治体も動画制作会社も満足している画は目に浮かぶんですよ

アウトプットわかりやすいし、KPIも測定しやすいから、説明しやすそう
隣の自治体がきれいな映像をまとめていれば羨ましくもなる

でも、まだ、実態が不十分な状態で、めっちゃ素敵すぎる動画を見て訪れた観光客は、
どう思うんだろう・・・

観光的効果ではなく、住民の満足度向上には寄与しているかもしれませんが

そんなところをみても、インバウンドで何か施策をやる前に、
そもそもの街としての戦略を考えるべきだと思うのでした

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