「観光コンテンツをつくろう」という動きは日本全国で取り組まれていて「ツアー造成」「ガイド育成」「プロモーション」事業は日本各地で行われています。現場感がない人も多い中、少しでも現場感が多くの人に伝わればと思い「1万人を超えるゲストを迎えたツアーの誕生から現在までの7年の成長記録」をお届けします。
記念すべき第1話は「700円のお茶体験をいれる?価値を感じてもらえる値付けと原価の関係」です。プランを考えてもそれが持続可能な収支でないと実現しないし、単にスポットを繋ぐだけでは付加価値は出ません。そのあたりが最初のチャレンジでした。
2014年秋ごろ。僕たちは事業展開をどうしていくか模索していた。
世界一周旅行から戻ってきた僕たちは、まずはゲストハウスを立ち上げ、そこに泊まる人にツアーを販売すれば、日本全国の結び目(KNOT)を創っていけるものと考えていた。
品川にあるゲストハウスで修業をして、いつでもゲストハウスをオープンできる準備は進めていたが、肝心かなめな物件が見つからない。今振り返ると、僕たちの覚悟が足りなかったんだと思う。
そうこうしているうちに時間は過ぎていく。このまま物件を探し続けるのが良いのか、どうか、を議論していた中で、築地での食べ歩きツアーを検討しようということになった。
パリやニューヨークで既にそうしたジャンルのツアーが行われているというのも大きかった。そうした先行事例をベンチマークに、築地でのツアーの検討を始めた。
- どんなコンセプトでツアーを行うか
- どこをどう見せるか
- どのくらいのコストでいくらもらうか
コンセプトは比較的早く「街をレストランにしよう」に決めた。海外から来る人は、寿司、ラーメン、てんぷら、焼き肉、、、を日本食だと思っているが、日本人が毎日食べているかというとそうではない。もっと街歩きを通じて日本人の日常の食事を楽しんでもらうことが出来ると満足してもらえるのではないかと考えた。
Learn+Taste=Enjoy
そんなコピーも合わせて掲げていた。
当時の築地はというと、場内市場もあり、見せる場所には困らなかった。外国人に有名な魚市場もあれば、知られてはいないが、面白みのあった青果市場も隣にあった。活気ある魚市場も、どの時間帯にどこに、生のマグロが置いてあるか、冷凍マグロが置いてあるか、フグはどこにあり、ウナギはどこか。そもそも、どこから魚が来て、どこに行き、何が起こっているのか。
複雑だっただけに、「ガイドがいる価値」を出しやすい場所だった。
(今のネットワークのまま当時に戻れれば凄いツアーが出来たのになぁと思ったりもする)
「フードツアー」というテーマの中で、何をどこで食べてもらうのか、が大事なポイントだった。海外のベンチマークを見ると大体3時間7,000-10,000円程度で、5-8か所程度に立ち寄るという感じだ。
僕たちも、築地のツアーで出来たらいいよな、、、と思ったものを書き出してみることにした
- マグロの解体ショー。できればそのまま食べる
- 玉子焼き
- 生ガキ
- 寿司:予算的にもゲストのお腹的にも数貫つまめるのがベター
- お茶・抹茶
- お酒
- さつま揚げ
- 鰹節削り体験+出汁作り
このように書きだしたうえで、実現できるかを再度現地訪問して見極める。
- マグロの解体はどこかでは見れそうだけど、その場で食べるのは難しそう
- 玉子焼きや生ガキはいけそう。玉子焼きは100円程度でコスパも◎。生ガキは300円~600円と日によってばらつきあるのが悩ましい
- 寿司も数貫つまめる適度な場所はキャパ的に難しい。鮪を食べるのは寿司の時に楽しんでもらえばいいかな、、、
- 抹茶を飲めそうな場所は、場外から若干歩く場所に発見
- お酒を出しているお店も殆どなかったけど、枡を売ってるお店がお酒を提供してくれることを発見
- さつま揚げは、100-300円程度でいくつかお店の候補が存在
- 日常催行が難しそうだが、鰹節削り体験をさせてくれるお店も発見
ここから難しかったのは、以下に限られた予算の中で、コストを抑えながら、ゲストの満足度を上げていくかという事だった
まずはベースとなる予算の設定。ツアーの価格を仮に9,000円とした中で、2,000-3,000円程度には食事にかける予算を押さえたかった。ガイドへの委託費用を3時間6000円程度とみても、交通費も含めると7,000円程度がかかる。決済手数料が4%程度。1人だと赤字だが、2人からは利益が出る。そんな水準で行きたい。
価格設定する際に、目に見える委託費や原価だけで検討するケースも多いが、決済手数料やシステム構築費、販促費、受付を処理するスタッフの人件費、当日集合場所に来ない場合の問合せコスト等、1回のツアーにかかるコストもあれば、ガイドの採用・育成等、他にも様々なコストがかかることも馬鹿にはならない。
食事にかける予算を、約2500円として組み立てた
・玉子焼き:100円
・さつま揚げ:150円
・生ガキ:400円
・抹茶:700円
・酒:??
・寿司:??
・鰹節削り体験 ・・・
このように構想を具体化していき実際に試してみることにした。
知り合いの知り合いづてに留学生に来てもらったり、Meetupと言ったサイトに情報を載せて、告知をした。
机上で考えるより、何より、やってみるに限る。
これはその時も、今も、変わらない感覚だ。
何が良かったか、とかフィードバックを貰う。
自分たちもやっている中で、ここが間延びするな、とか、ここは忙しないな、とかいう感覚を得る。
やらなきゃわからないことが沢山ある。
ここから、色々行程の見直しをした。
その中でも一番最たるものが抹茶を削ったことだった。
抹茶は日本の文化体験としても是非体験してもらいたいことだったのだが、価値を出せないと感じた。
・1人あたりのコストが700円と、原価の3分の1を占め重い
・自分で一人でお店に行っても同じような体験をすることが出来る
・お茶の試飲、寿司にもお茶が出てくる。試飲との違いすら見えづらい
700円のものを700円の価値を感じてもらえるならまだいいが、700円の価値すら感じてもらえないのであれば必要性がなかった。ガイドツアーを催行する上では、700円のコストをかけるのであれば、ガイドの価値を乗せて、1000円~2000円位に感じて貰わないといけない。
煎茶と抹茶、、、外国人にとっては誤差かもしれなかった。
700円は別のことに回すことにした。
「どうしても○○をしてもらいたい」という想いは大事だが、「それにどの程度の価値を感じてもらえるか?」「ツアーで行く意味はあるのか?」という視点は必要になる。「ツアーで行く」ということは同行のガイドの人件費代もゲストに負担してもらうことになる。自分で行ってもらった方が、ゲストには割安で楽しめるかもしれないのだ。
このように、商品をつくるときには「いくらで買ってもらえるか」「いくらで売りたいか」「どこでいくらくらいの価値を感じてもらえそうか」を意識することが売れる商品・満足してもらう商品を造っていく上では大事だと思っている。
特に、日本人向けだと、原価を積み重ねてコスパを判断する方も多く、見方は厳しい。
「ツアーならではの価値」を考え続けなくてはいけない。
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