第13話 MSGフリーって!?魚食べられないのに、築地!?食の多様性への対応

ツアー誕生ストーリー

ゲストが増えてくると様々なリクエストを受けるようになる。

「生ガキはちょっと遠慮したい」「お酒は飲めない」「カニはメニューに入っているか?」…
このあたりは、日本人に対してサービスを提供しても容易にイメージはつくだろう。

でもゲストと接していて、本当に色々な食の制限があることを勉強させてもらった。

これら全てに対応する必要性は必ずしもないと思うが、ビジネス面で見てるだけじゃなくて、安全面で見ても、必ず知っておく必要がある。

ツアーをしてて体感する食の多様性

冒頭で述べた、生ガキやお酒や甲殻類系はまだわかりやすいが、本当に色々なリクエストを貰った。

グルテンフリーでよろしく
妊娠しているので生ものはNG
1人がヴィーガンなんだけど大丈夫?
ユダヤ教なので・・・/イスラム教なので・・・

「ハラル対応」「ベジタリアン」「ビーガン」…海外ゲストと対応するときに様々な食の制限を耳にする。
実際に食べ歩きのツアーをやっていると、日々向き合うことになる。

しまいには、「魚が全般的に食べられない」という人もいた。

え、築地だよ?築地って魚の町だよ?
魚食べられないのに、築地くるの?ホントに?

最初リクエストを受けたときは素直にそう思った。
いや、築地に来てみたいのはまだいい。まだいい、というか全然わかる。

そこで、フードツアーに参加したいって、何を期待しているんだろう…と。

今までで一番難易度が高かったのは、MSGフリーだ。

聞いたこともない人も多いと思う。
僕たちもあのゲストが教えてくれなければ知らなかった。

化学調味料不添加のことだとわかったが、大変だったのは、既製品を料理に使う人も多い中で、その既製品に使われているかが分からないことだ。

できる限りゲストに楽しんでもらえる努力をする

こうした食の多様性を踏まえて、僕たちがどうしてきたか。

結論は、出来る限りの努力をした。

お酒が飲めないなら、代替として、甘酒やジュースを提案する。
生カキが食べられないなら、特別に寿司屋で大トロを一貫追加サービスした。
生ものが食べられないなら、寿司屋さんにお願いして全部をあぶってもらった。

魚が食べられない人をどうしたか・・・って?

ブドウとか焼き芋とか、果物や野菜に代替しつつ、寿司もかっぱ巻きとか、そうしたものを楽しんでもらった。
確かにチャレンジングなんだけど、出来ないことはない。

対応してくれたガイドの方々には感謝しかない。

ツアーを催行していく中で僕たちも色々勉強させてもらった。

嗜好なのか、宗教上なのか、健康上なのかを見分ける

こうした食の多様性に対応するとき、気を付けなくてはいけないのは、自分の物差しで測らないことだ。ほんのちょっとだったら大丈夫だろう、という判断が命取りになるかもしれない。

イスラム教徒でも、お酒飲んでいる人がいたから、次のゲストも多少のアルコールくらい大丈夫だろう、なんて思ったら大きな間違いだ。
どれくらい厳格に食事を制限しているかは、人によっても異なる。

宗教の問題だけでなく、「グルテンフリーでよろしく」と言われても、健康上出来る限りグルテンを取らないようにしている人もいれば、ホントにちょっとでも体に入れるとアレルギー反応が起こってしまうケースも存在する。
最近、日本人でもアレルギーが身近にはなりつつある気もするが、「出されたものは好き嫌いなく全部食べるのがマナー」と育てられた日本人にとっては、こうした食の多様性が特別なことに映る。

まずは、先入観なしに、相手がどういう食事制限があるのか。その食事制限は、嗜好の問題なのか、宗教上の問題なのか、健康上の問題なのか。程度はどの程度かを理解する必要があり、その上で対応方針を考えていく必要がある。
ゲストを理解することと合わせて必要なことは、料理に対する最低限の知識だ。

例えば、グルテンフリーで言えば、、ラーメンやうどんに含まれていることはわかりやすいが、醤油にも製造過程で少量のグルテンが使われていたりもする。
過敏な方だと、この少量のグルテンがNGだったりする。

MSGフリーと言われた時も同様だった。様々なものに、化学調味力が使われている。
事前に聞いてはいたが、それが、嗜好なのか、健康上なのかはわからなかった。

例えば「さつま揚げ」とかも自分のところで加えてはいないが、仕入れの前のことや添加している調味料に含まれているかは分からない、、、というようなことも起こった。
出来る準備としては、事前に情報を仕入れた上で、厳格な場合は、「素材のまま塩で楽しんでもらう」というプランB、Cを用意しておくことだった。

言葉を額面通りに受け取らないことも時には大切

良くガイドから、「食事制限とかあったら事前に教えてください」と言われることがある。
その気持ちはよく分かるし、それで準備を進めようという心構えも素敵だ。
僕たちとしても、ゲストには、「何か食事制限があったら事前に教えて欲しい」と伝えている。

しかしながら、すべてのゲストがそれを読んで、先に連絡をくれるわけではない。
伝えてもらっていたとしても、その場で改めて確認をして欲しい。

「何も聞いてない」=「何でも大丈夫」というわけでもない。
「何か聞いた」=「それ以外は大丈夫」というわけでもない。

それに、「○○は避けたい」って連絡が来てたゲストも、実際にツアーに来たら、気にせず食べていた、なんてことも存在する。

嗜好や程度の問題もあるし、間に人を介していたために、伝言ゲームになって事実と違うこともある。

「○○食べれないって聞いてたけど、なんか他に食べられないものある?」と改めて現場で確認するといい。
そうした会話の中から、ゲストの新たなニーズを掴めたりもする。

それと同時に、お店側等との確認の際も、背景を含めたコミュニケーションをするとよい。

これ「グルテン入ってますか?」って聞いたとして、日本人ばかりを相手にしている人はもしかしたらピンとこずに「(殆ど)入ってないよ!」と答えるかもしれない。
それをそのままグルテンアレルギーな人に提供すると、健康上の問題を引き起こすかもしれない。

聞く際にも、「アレルギーの可能性があって・・・」とか前置きをすることで、相手もちゃんと調べてくれるなんてこともある。

こうした、食事文化の通訳も、ガイドの重要な仕事の一つだと感じるようになった。

ゲストと料理への理解が、今後インバウンドが増えるとより求められるコトになるだろう。
理解しておかないと安全面で事故に繋がるかもしれないし、理解しておくことでビジネス的な可能性も拡がると感じている。

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