福島第一原子力発電所の視察地的活用を考える

日々のこと
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福島沿岸部訪問ツアーを主に外国人向けに催行しておりますが、
先日縁があって福島第一原子力発電所に訪問してきました
(※写真は公開許可の取れているものを使っています)

「え、福島第一原子力発電所って行けるの?」

最初は、そう思いましたが、
聞くに、年間1万人くらいは視察に訪れており、向こう3カ月は予定が埋まっているようです

構内で働いている人も3700名ほどいる

日本人でもまだまだ知らない福島ですが、
情報発信等の為にも今後視察の門戸は広げられる可能性がありそうです

ただ、個人的には、復興のためにも慎重に、そして戦略的に、
視察地としての活用を考えてほしいなと思っています

視察拡大していくのはいい傾向である

事故が徐々に風化していく中で、現地を訪問して現場を見ることはとても大切です

帰還困難区域は、年々解除され、人の住めるエリアは拡大しています
当時の家は解体が進み、当時を思い出させるものが少なくなっていっていることも事実です

そうした中で、事故の中心地でもあり、
向こう数十年にわたり廃炉作業が続けられている第一原子力発電所を見るということは、
当時の教訓を後世に引き継いでいく上でもとても大事なことだと感じました

また、汚染水問題等ニュースをにぎわせる問題についても、
現場を見ることで自分なりの考えを養くこともできます

加えて、現地を訪れる人が増えることは、「交流人口の拡大」などともいわれますが、
地元にとっても消費の機会が増えますし、そうなると雇用も生まれるので、
復興に向けて重要なことです

こうして考えると、
第一原子力発電所の視察が拡大していくのはとてもいいことのように感じられます

「第一原発」を活用できないまま消費してしまう危険性がある

しかしながら、一度立ち止まって考える必要があります

第一原発の視察拡大と言っても、セキュリティ面等の課題もあり、受入限度があります
その影響もあり、向こう3カ月の予定は埋まっている、という事情もあるようです

福島の沿岸部に行くとして、みんなどこに行ってみたいと思うでしょうか
福島の沿岸部に行くとして、何日間くらいの旅程を考えるでしょうか

多くの人が、もし第一原子力発電所が見れるのであれば、そこは訪れたいと思うはずです
そして、国内の人に限れば、多くは週末の2日間で訪れようと考える人が多いでしょう

「第一原発視察」がボトルネックになる可能性

そうなると、
「第一原発が見れる日程で福島沿岸部に行ってみよう」と計画を立て始めます

でも、そこには受入限度の問題があります

もちろん、
「第一原発は見れないけど、周辺だけ見に行こう」という人もいます

ただ、実際問題、
「広島で厳島神社の鳥居が改修中だから広島行くのはやめよう」
「清水の舞台が修理で見れないなら清水寺はパスしよう」という話を耳にします

一番の目的が達成できないなら、そこにいかないと判断する人も多く、
第一原発視察を開放することで、
第一原発視察の人数がボトルネックになってくる可能性はあります

「第一原発」以外の時間を十分に確保できない機会損失

それと同時に、もう一つ別の問題が生じます

2日間の旅程で、往復の時間等を考えると、現地滞在の時間は限られます
そうした中で、第一原発視察を組み込むと、他の場所を見る時間が削られます

第一原発は確かに一度目にしておきたい対象ではありますが、
一度第一原発を目に出来れば、再度沿岸部を訪問しようという気持ちは弱くなる可能性があります

一方で、人が戻って生活を始めている場所での取組に触れる時間があると、
この場所が1年後、3年後、5年後どうなっているのだろうと考えるきっかけになり、
その人に会いに、または、変化を見に、再訪する理由になってきます

その時間が削られてしまうことも大きな機会損失です
また、現地で消費する時間が削られるということもあります

「第一原発視察でお金をとる」は世論に受け入れられないリスク

ではいっそ、第一原発を見たいと思う人が多いのであれば、
第一原発視察の料金設定を高めにすることで、
沿岸部での目的地を分散化させるという考え方もあります。
第一原発視察で得たお金を地域の復興に充てていくのも一つです

「自分で訪れても当時の教訓から学べることもたくさんあるけど、
第一原発見るなら1万円のツアー参加費払ってね」というやり方

悪くはないと思うのですが、
「 第1原発で 金儲けするな!」的な世論が発生してしまうのが今の日本です

このように、
第一原発の視察を何も考えずに拡大しようとすると、
結果として逆効果になるリスクもあると感じています

カギは「視察」をベースに雇用を産むこと

せっかく第一原発視察を一般に拡大していくというのであれば、
戦略的に取り組んでいくことが必要です

例えば、第一原発視察を安売りしない仕組みが考えられます
・週末は福島県内に2泊する人だけを対象に視察を受け入れる
・1日視察したら、1日はボランティア業務に従事してもらい、実情をより体感してもらう
・視察料をちゃんと徴収して、地元に還元をしていく

大事なことは、第一原発およびその周辺地域の活用により、雇用を産めるのか、ということです

第一原発はキャパがあるのだとすると、
現在許可なく立ち入ることのできないエリアについても、
視察地として有料で開放していくというのも考えられます

人とのつながりなのか、素敵な景色なのか、コミュニティ・街の醸成の過程なのか、
「また来よう」と思う仕組みをどう組み込めるかも一つのポイントになってきます

訪れる人が増えても、住む人が増えなければ、
数十年の廃炉作業が終わった後にはどんどん人が減っていきかねません

福島県の浜通りは、元々産業が弱かったこともあり、
発電所を誘致して、現地の活性化に貢献してきたという背景もあります

原発事故前は、原発で働くことは花形の仕事だったと聞きますし、
多くの人が、発電所関連の仕事を生業にしていました

富岡町や浪江町が帰還困難区域を解除されて間もなく3年経つのに、
震災前の1割弱の人口しかいないのは、
避難先にコミュニティができてしまったことと同時に、仕事がないからでもあります

普通に無料で行けるようになってしまえば難しいですが、
規制がかかっていることで、利権にもなりかねませんが、雇用を産む機会でもあります

実際チェルノブイリでは30㎞圏内は立ち入りが制限されていて、
政府公認の旅行会社のツアーでないと立ち入れないことで、
ツアー会社が多くのゲストを有料で受け入れています

単に多くの人に見てもらおう、と無料で開放すると、
「見てもらえてよかったね」以外残らない可能性もあります。
雇用を産もうとツアーをはじめたり、入場料を取る形にしても、
見合った価値のものを提供できないと、単なる利権になりかねません。

時間は刻々と経過し、現地の復興も日々進んでいる中で、
現状不十分ですし、時期尚早な部分もありますが、
議論のたたき台として今の自分の感じていることをまとめてみました

もちろん多くの人に見せるということになると、
地元の方たちとの合意をとっていく必要はあります

ただ、第一原発とその周辺の帰還困難区域は、
将来的に雇用を産むことのできる可能性を秘めた数少ない場所だと感じています

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当投稿においては、あえて「観光」という言葉を用いませんでした

「観光」という言葉自体は、光を観ることであり、
まさに福島に適した言葉だと感じています

一方で、観光には、遊び・レジャーというイメージもあり、
今はまだ不謹慎だ、という印象を持つ人が多いのも事実だと感じています

早くまた多くの人でにぎわう浜通りが見れることを祈るばかりです

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