山梨ワイナリー訪問に見た酒蔵ツーリズムの可能性

観光雑感

これまでに、それなりの数の酒蔵を訪問してきました。
そこで感じたことは、「どこも大して変わらない」でした。

もちろんお酒は違うし、建物も違うし、人も違うし、全然違うんです。

でも。

 

どこ行っても、
「大吟醸と吟醸と醸造酒があって…」「米と水から作られていて…」
「ここで酵母を育てて、ここで酒米を炊いて、この樽で…」
という説明を蔵見学で耳にすることができます。

最初のうちは新鮮でした。でも、いくつか行っているうちに、またか…となるんです。

しまいには、実はここではもう作っていなくて、離れたところにある近代的な工場で…みたいな話になると、
何のためにそこを訪問しているかもわからなくなってきます。

 

日本の各地を訪問すると「うちには酒蔵があって・・・」ということを耳にするのですが、
そうなってくると、酒自体にブランドがない限りは、
建物がそれっぽい(和風の蔵っぽい)か、アクセスがいいことが大事で、
あまり差別化要素がなくなってきてしまいます。

 

「日本酒は人気があるから、酒蔵ツーリズムで街おこしだ!」という風潮を見ていて、
なんだか失敗しそうだなぁという匂いをぷんぷん感じていました。

だって、競争力(酒のブランド・和風建築・アクセス)が伴ってないケースが多いからです。

 

フランスのワイナリーとか、スコッチの蒸留所とか、どうやって観光コンテンツにしてるんだろう。
一度訪問して、その成功要因から示唆を得たいなぁと思ってはいるものの時間が取れず。

 

そんなことを思っていた折に、日本のワイナリーに興味を持ち、
そして、「ワイナリー訪問なら、勝沼醸造のオーナーの方に案内してもらうのがいいよ」というアドバイスをもらい、
先日、山梨県は甲州の勝沼醸造に訪問してきました。

 

そこで酒蔵ツーリズムにもつながるヒントを見つけました。

思っていた仮説とは違った部分もあったけど、めっちゃ面白かったんです。

 

当初僕が思っていたのは、
日本の酒蔵は、建物の中の製造工程を見せるけど、
ワイナリーは、もっと周りの風景も含め自然・文化(含む食事)を見せるから魅力的だと思っていました。

 

でも、終わってみると、
シーズンオフだったということもありますが、別にブドウ畑を見学することもなく、
基本建物の中で過ごしている時間が大半でした。

 

しかも。

酒蔵で毎回のように聞くお酒の作り方のような、
ワインの作り方とかについては、振返ってみれば全くありませんでした。
実際にワインをつくっているのはちょっと離れた場所ということで、製造工程も全く見ませんでした。

初めてのこういうワイナリーツアーだったので、ちょっと聞きたくもあったのに。

 

それでも面白いと思ったのは、
勝沼醸造のワイナリーの哲学に触れることができたからだと思っています。

それは、今回オーナーの有賀社長直々に案内いただけたということも幸運でした。

 

何を目指して、ワインづくりをしているのか。
どういうこだわりを持ってワインづくりにあたっているのか。

ワインというと、なんだかオシャレな、とっつきにくさを感じる部分もありますが、
これを素人にも分かるように、でも熱い想いをもって、語ってくれました。

「一樽でもいいから最高のワインをつくりたい」
「世界に勝負できるワインをつくりたい」

「そのために○○という工夫をしている」
「最高のワインを見つけるために収穫した場所ごとに細分化しこれだという味を探している」

話を聞いているうちに、僕たちが日本代表を応援しなきゃって思わせられました。

 

そう。

酒蔵も、一般的なお酒の作り方を伝えるのではなくて、
「何がその酒蔵ならではのこだわりなのか」
「そのためにどういうことに取り組んでいるのか」を素人にも理解できるように語れば、
もっと面白いコンテンツになると思うんです。

この「素人にも理解できるように」というのも大事なポイントになりますが、
残念ながら、これまで酒蔵を訪問してもあまりそういう話を耳にすることはありませんでした。

これが一つ目。

もう一つは、当初思っていたことにも近いですが、楽しみ方の提案。

 

ワインですが、和室で、まずはテイスティングをしました。
分かりやすく説明してもらいながらワインをいただき、教養がつきました。

 

最近、コルクからスクリューボトル(くるくる回して開くやつ)に変えた勝沼醸造。

一般的にコルクのほうが高そうに見える中、なんでスクリューボトルに変えたか。

曰く、
「コルクだとそれなりの確率でダメなワインに合う。
たまたま自分が、自分の卸している先でそれに何度かであった。
でも多くの人はダメなことに気づかず、そういう味だと思って飲んでしまう。
そういうことにならないようにスクリューに変えた」

なるほど~、と、ここにも哲学の片鱗が見えます。

 

続いて舞台は近くのランチのレストランに移動。

 

「ワインは食事と楽しむもの。
ワインを飲むというより、もう食事のそばにある自然なものなんだ。」

食事に合わせたワインを楽しみます。

 

強いて言えば和食とのペアリングを楽しみたかったところですが。
昔からのスタイルということで、欧風料理のレストランで、美味でした。

単に飲み物として楽しむのではなく、食事の一部として楽しむワイン。
これって日本酒でも、これから求められていくポイントだと思うんです。

 

現状、製造工程を伝え、日本酒単体で勝負をする酒蔵ツーリズムですが、
もっと酒蔵の思想を伝え、食事とのマッチングを提案するようになれば、
もっともっと酒蔵ツーリズムの楽しみは広がっていくのになと感じたワイナリー訪問でした。

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