「Go To キャンペーン」の「事業イメージ」見直しをお願いしたい

事業

観光復興策として、議論の俎上にあがった時から賛否両論のあった「Go To キャンペーン」
国土交通大臣が開始時期に言及したことで、いよいよ具体化してきました

それにしても「観光需要喚起策」と言っているが、
誰が求めていて誰を向いている事業なのだろうか

是非、1兆円を超える莫大な予算の使い道を有効に使って頂きたいなと思ってます

※私自身はインバウンド旅行を中心とした事業を元々行っておりました。現在は、外国人旅行者に限らず、様々な可能性を検討しています。「GO TOキャンペーン」はインバウンドアクティビティ事業者にはあまり関係が薄そうですが、このまま開始されても何かしら絡めないかと模索しているのも事実です。極力、「日本の観光復興のため」という視点で書くつもりですが、ポジショントークが入ってくることもある点については立場を補記しておきます。

混乱と消耗が予想される「Go toキャンペーン」

まず「Go Toキャンペーン」とは何か

「新型コロナウィルスで、観光が壊滅的な影響を受けているので、
旅行・飲食・イベント等の割引券を発行して需要を喚起しよう」という事業です

出典:令和2年度 国土交通省関係 補正予算案

ちなみに同様の事業は、
台風等の被害で落ち込んだ観光需要の早期回復のため行われることもあり、
昨年度は台風19号の被災地を対象として行われていました

これまで一定の成果はあったし、
既にやったことのある施策だから実施の土壌が整っていてすぐスタートできます

だから、迅速に行動できるんでしょうけど、懸念点もあります

観光地の混雑・混乱を助長する可能性

長い自粛生活の中で、多くの人の旅行したい欲は高まってます

エンターテイメントも、好きなアーティストのライブに今すぐにでも行きたい!
むしろ割増払ってもいいから行きたい!ってくらい思っているはずです

クーポンがあったら、そりゃ、消費者の立場として嬉しいですが、
なくてもしばらくはどの観光地も週末は混雑することでしょう(特に都市部の近場)

ましてや今は受入側も、来てほしいけど、
コロナウィルスを持ち込まれて万が一のことがあったら、、、
と慎重になっているタイミングです

そこにキャンペーンをはると一気に人は動きますし、あちこちに密が生じます
受入側の住民の感情的な側面もあるでしょうし、混乱が予想されます

過年度の事業は、日本の一部に被害があって
相対的に凹んでいる観光地を支援するという点では有効でした
ただ、日本全国が影響を受け、海外に行けない分、
人は国内で旅行先を探している今、状況は違います

はじめるタイミングややり方は要検討です

クーポンのお客様が一過性になってしまう可能性

そして、施設側としても、どうせ混むんだったら、
クーポンではない形で既存のファンの人にまず来てほしいという思いもあります

キャンペーンで来てくれて、
新規顧客をファン化していくというのももちろん意味はあります

でも、例えば5万円の部屋を、2万5千円で泊った人は、
やはり、普段5万円の部屋に泊まる客層とは若干違うのです

特に宿泊施設はキャパが決まっているので、稼働率100%以上に儲けることは困難です

クーポンで沢山のお客様が来てくれて忙しかったけど、
クーポンの時期が終わったら・・・では消耗するだけで潰れてしまいます

長期的にみるとリピーターを増やしていくことが観光地としては求められます
クーポンを使って一時的に集客してもファン化できなければ良策とは言えません

結果、Go Toにより観光事業者が受けられる恩恵は限定的

そんな懸念もあるため、
このままキャンペーンをやっても観光地が受けられる恩恵は限定的です

もちろん恩恵は受けるんです!
当たり前ですが、このままやってもある一定潤います

でも、1兆6,794億円分潤うのかと聞かれると、、、

クーポンなくても人は動き出す(=観光事業者の売上は立ち始める)し、
クーポンは一時的なもので持続可能性の観点から見るといいことばかりじゃないから、
割引キャンペーンを大々的にやるのは、意味が薄いんじゃないかというのが意見です

外で何かをしたい欲望の高まり切ったみんなの時間を、
TravelとEventとEatと商店街で奪い合う、、、みたいな構図にもなりそうです

儲かるのは、間に入る代理店やプラットフォーマーといったところでしょうか

より観光復興に寄与する「Go toキャンペーン」を

では、どんな復興策が考えられるのか

6月19日から都市部も含めて移動してもいいよ、という話はありますが、
どういった復興策があるのかを考えてみました

安全・安心・歓迎の合意形成および実行・発信支援

国が「移動してもいいよ」と言っても、観光地として来て欲しいと思っているのか、
旅行者としては心配です

もちろん、観光事業者としては来て欲しいのですが、
住人から厳しい目が依然としてあります

観光公害とならぬよう、地域として観光に対する合意をとる必要があります

そして、実行し、地域としての観光に対する姿勢も国内外に発信していくこと

その動きを支援してあげるだけでも、旅行者は動き始めると思います

検温を始めるだけでもそこに人を置かなくてはいけません
体温計はそこまで負担ではないかもですが、
マスクや消毒液は量が嵩めばそれなりの負担です

その負担を支援するところから観光は新しい発展の道を歩めると思うんです

ちなみに、新潟の佐渡が創った動画を見て、佐渡に行きたくなりました
素敵です

観光事業者・エリアへの事業創出支援

もう、観光復興のために、観光客にクーポンで旅行費用をばらまくくらいなら、
そのお金を観光事業者に直接ばらまいてほしい!

距離を保つために、キャパを絞ればその分採算は悪化します
事業者はこれまでと違ったビジネスモデルの模索をしないといけないケースもあります

そのお金で受入環境を整えて、魅力的なサービスを提供できれば、
旅行者は、正規の価格を払ってでも旅行するはずです

宿泊施設で働く友人から聞いてなるほどと思いました

「1万円のところを5千円引かれるより、4万円のところが2万円の方がお得感がある」
「高級旅館の集客にはつながるが、そうでないと・・・」
「お得感を出すために何か付加価値をつけないとと思っている」

クーポンで支援するにしても、直接事業者・エリアを支援し、
稼働率100%以上の収益源を創ってあげてからの方が有効です

繁忙期の平準化誘導策

そして、クーポンを実際に撒くにしても制限をかけるべきです

「宿泊は月~木のみ使用可!」とか。

日本人は昔から土日に集中して旅をするんです

上述の通り観光地にはキャパがあって、
土日の行楽シーズン(夏休み・紅葉等)はどこも人であふれてます

地域を潤すには、閑散期の稼働率をいかに上げるかが鍵です

リモートワーク、ワーケーション等の兼ね合いで、
平日に旅しやすくなってますし、是非クーポンは平日への誘導に使って欲しいです

[2020.6.15追記]
改めて平日の活性化策がとても重要だと感じています
クーポンの平日限定化に加え、他の施策も打てば、週末旅行の+1泊含め、
より観光消費の拡大につながるはずです(もう検討の時間もなさそうですが)
・高速道路の平日無料化
・JR特急平日乗り放題パスの販売

–追記ここまで–


2か月後には、単なるクーポンのばらまきが始まっちゃうのでしょうか

もっともっと有効なお金の使い方は議論すれば沢山出てくると思います

既に大手事業者が動き始めてしまっており、
今から見直すというのは難しいのかもしれません

でも、観光が少しでも、
事業者にとっても、地域にとっても、旅行者にとっても、
明るいものとして発展していくよう、
貴重な税金が活用されることを祈るばかりです

コメント

  1. […] 一緒にやっているFumitoが書いている、週末の平準化などは非常に意味があると思います。 […]