「ガイド教育」を学校教育におススメする10の理由

事業

ツアーを自分たちで行い始めて、ガイドの大事さを痛感して早8年が経ちます。
そして、ガイドの育成をする中で、求められるのは、知識や言語だけではなく、人間としての総合力だということを日々感じています。

自分が言うとポジショントークのように聞こえてしまうのですが、日本が今後生きていく上では教育改革が絶対に必要だと信じているし、そうした中で「ガイド教育」を取り込むことは、より実践的であり、観光人材の育成だけではなく、グローバル人材の育成において物凄い有効だと信じています。

近年、大きな教育改革は行われなくても、部分的に「総合的な学習(探求)」といた時間も取られるようになったと聞きましたが、個人的にはぜひ「ガイド教育」をおススメしたいと思ってます。

歴史・現代社会・地理・地学・・・様々な学習をする

ゲスト満足度において知識は重要ではないと言っても、十分条件ではないけど必要条件です。やはり説明をする上では最低限の知識は必要になってきます。

そして、知識も多岐に及びます。歴史、現代社会、地理、地学等々は必要になってきますし、教科書には載ってないその地域特有の歴史や文化・風習等も押さえておく必要があります。

「何のために覚えているんだろう」と思っている学生も多いかもしれませんが、アウトプットが見えていると目的意識が芽生えるので、より学習に効果的です。

丸暗記ではなく、知識に繋がりや深みが生まれる

そして、知識を覚える際にも、相手に伝えることを意識すると、その流れや関連性を考えるようになります。また、ゲストからの質問を受けたりすることで、「なんでだろう?」「ここは聞かれそうだな、調べておこう」といった疑問を日頃からも考えるようになりますし、知識に繋がりや深みがうまれていきます。

通常、歴史・現代社会・地理・地学・物理・化学・・・と教科ごとに縦割りになっている学習が横の糸で繋がれていきます。

これもガイドでは日常的なことです。

「勉強」の活用イメージが湧く

このようにインプットとアウトプットを繰り返すことで、より「勉強」の意味を理解することが出来るようになっていきます。

よく、社会人になってから「もっと勉強しておけばよかった」と聞いたりもしますし、最近でも「リスキリング」という横文字をニュースで聞くようになりましたが、「リスキリング」は、スピードの速い社会において稼げる力を学び直すためには必要な施策ですが、そもそも「勉強」が将来にどう活きるのかの関連性を早い段階で知っていれば、学生のうちに活きる勉強ができるはずだって感じています。

英語力が付く

英語力もその最たる例な気がしています。

日本では「This is a pen」にはじまり、「正しい英語」を身に付けることを求められているように個人的には感じていました。

「喋るのは『あいつの発音変だ』って思われそうだから話したくない」

中学・高校・大学に到るまでそんな感情を持ってました。アジアや南米を旅して、「まずは伝わること」の大切さを感じました。Nativeの授業を取り入れることも大事だけど、人数とコスト的に限界もあります。ガイドであれば今後もっと多くの外国人が日本に訪れるはずで、もっと活きた英語に触れる楽しさを提供する機会を創れます。

プレゼン力・コミュニケーション力があがる

外国人向けのガイドをすれば語学力も付きますが、別に日本人向けのガイド教育でもいいと思っています。大事なことはプレゼン力・コミュニケーション力があがるという事です。

プレゼン力は大きく分解して、「相手のニーズを察知する力」と「相手に伝える力・相手に行動に移してもらう力」に分解することが出来ると思ってます。

これって、物凄く大事なんだけど、今の教育の中では殆ど鍛えられることはありません。強いて言えば部活動や共同生活の中に委ねられます。

単に手をあげて発表するだけでは、スピーチ力はあがっても、コミュ力には限定的です。

異文化コミュニケーションができ視野が広がる

外国人に関わらず、地域の外の人とコミュニケーションする機会って、学生時代にどの程度あったでしょうか。特に、高校生まで、と考えると物凄い限定的だったんじゃないかと思ってます。

自分の普段接している枠の外の人とコミュニケーションすることは、視野が広がる大きな機会です。自分が外に行くことが出来れば、それはより良いですが、高校生くらいまでで自分が飛び出ていく機会というのは限られています。そうであれば、外から来た人との接点を創りに行くことを考えるのが手っ取り早い方法です。

外の人はどんな価値観を持っているのかを知ることができるときっと将来に活きるはずです。

郷土愛が芽生え、Uターンの確率もあがる

「自分で自分の地域のことを調べて相手に伝えること」「相手から自分の地域のどこが魅力的に映っているかを知ること」これを続けていけば、必ず、自分の住んでいる場所の魅力に早く気付けるはずです。

「お前の住んでる場所、本当に綺麗で羨ましい場所だよな!?」

地方に住んでるときにどれだけの人がその豊かさを感じて来たでしょうか。
なんだか周りを見ていると、東京に憧れて上京し、数年都市で働いてやっとそのありがたみを理解した、という人が多いように感じますし、まだ、地域の魅力が見えていない人もいるのではという気がします。

大学の選択肢を考えると、高校卒業後一度は地域を離れてしまうのはやむを得ないことかもしれませんが、早いうちに地域の魅力を感じて貰えば、大学卒業後の就職の際に戻ってくる率は上がるはずです。

観光産業のベースが耕される

大学卒業後に戻ってくる際に、仕事が各地域にあるか、というのも大きな問題にはなってきます。でも、ガイド教育を通じて、人間としての総合力が磨かれていけば、その人材は必ず観光産業全体で活躍できる人になるはずです。

まだまだ観光産業は儲からないとか、今回のコロナのようなリスクに弱いとか言われますが、今後の日本の産業構造で言えば、人口減の中数少ない成長産業でもあります。

そこを高付加価値化できる担い手を育んでいくことが出来る。とても意義がある取り組みだし、雇用の促進にも繋がっていく話です。

相手目線や収支面などビジネス的な学習にもつながる

知識や語学、コミュニケーション能力面でのスキルアップの話を中心に語ってきましたが、もうちょっと踏み込んで学習に取り入れるなら、高校生以上であれば実際に自分たちで値付けを行い、ゲストを有償で迎え入れてみてはいかがでしょうか。お金が介することで、より真剣度が増します。

「いくらならゲストが払ってくれるのか」
「いくらなら自分たちも赤字にならないのか」
「他のサービスはどのくらいの価格で提供しているのか」

「どうやったらゲストに知ってもらえるだろう」
「満足度を上げるためにはどうしたらいいか」
「そもそも誰をターゲットにしよう」

「非常事態にどうしよう」
「クレームにはどうやって対応しよう」

そこで浮かんでくる論点は、大学の経営学部とかでやってるちょっとしたゼミより実践的なビジネスのことが学べる問いです。

教養レベルも引き上げられる

「お前はAbeについてどう思う?」

ゲストと接していると突然色んな方面から質問が飛んできます。
Abeって誰かと思ったら、安部元首相でした。そうした問いかけもアウトプットする機会があるんだとわかっていれば日頃ニュースを見る目も変わります。

政治や経済だけじゃなく、「○○美術館に行きたいんだけど…」「建築家の△△に興味があって…」とゲストの興味・関心は多岐に渡ります。

すべてを最初から知っている必要はないけど、日頃から接しているとそういう人とも会話を合わせられるようにしなきゃ、と情報収集の感度が高くなります。

日本で「教養」を身に付ける機会って、これまた個人個人に任されている面が強いですが、「ガイド教育」ってそういう面でも有効的だと感じるのです。


ざっと思いつくところを書いてみました。

「ガイド教育」

これ、中学か高校か、遅くても大学のゼミあたりで取り入れたら面白いと思ってます。
自分たちも部分的に高校の部活動のサポートをしたこともあるのですが、もっと広がっていったらいいのに、と感じてます。

ただ、問題は誰が設計し、誰が教えるのか、という事。
(上記の目標を達成させられる先生は世の中に多くないし、きっと既存の「先生」ではない。)

どこかでまずは成功事例を1つでも作れば流れは変わったりするのでしょうか。
熱い想いを持った人あるいは教育委員会と、一度深掘りしてみたいテーマです。

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