5年間で見えてきた可能性と壁−ガイド団体設立の先に見たい世界

奮闘記

2014年2月に会社を創って今月で6年
2015年1月からツアーを始めて、5年が経った

お陰様で多くのゲストをお迎えすることができ、
チームも20名ほど、ガイドも100名超の体制に成長し、出来る事も広がってきた

そしてこの2020年2月、これまでの事業に加えて、
新しくJapanWonderGuideというガイド団体を発足することにした

それは、会社のミッションを実現する方法を考えた時に、絶対必要だと感じたからだ
手間はかかるだろうし、道が見えているわけではないが、
日本が持続可能な観光立国としてやっていく上で、欠かせないことだと考えている

『国境を越えた結び目(KNOT)を創出し、みんなの人生を豊かにする』

knotworld.jp

では、なぜ、ガイド団体を作るのか

この5年で見えてきた可能性と壁
その可能性を拡げ、壁を乗り越えていくための方法
壁が乗り越えた先に見える世界

それをお伝えしていきたい

「ガイド」という魅力的な存在に感じる可能性

旅行業経験がない自分たちにとっては、
この5年間は本当に試行錯誤の連続だった

最初の頃は、これで食べていけるのか、不安だった

でも、
ガイドの方々にも恵まれ、
ゲストにも恵まれ、
街の方々にもよくしてもらい、
素敵なメンバーも集まって、
ここまでやってこれた

道中自分たちもずっと発信してきたが、
「ガイド」っていう存在はホント素敵だ

ガイドは、大好きな街を紹介することで、
ゲストは喜んでくれるし、街を好きになってくれる
街をより好きになれるし、その上、お金まで頂けてしまう

ゲストからしても、ガイドがいることで旅の密度が変わる
知らなかったストーリーから、新しい発見・気づきがあり、
その国の魅力をより深いところで把握することができる

街にとっても、素通りしていたかもしれない場所で、
ガイドの説明を聞いて商品を好きになり、買ってくれる人がいる
外国語が話せなくても、ガイドがいれば仲介してくれて国際交流ができる

ヒトと場所、ヒトとモノ、ヒトとヒトを繋いだ先に、
相互理解が深まり、世界平和に貢献できる

どう?

楽しいし、ニーズもあるし、意義もある

都市部でも地方でも、もう、可能性しか感じない
実際、年30%くらいで、自分たちの事業も成長してきた

ただ、一方で、年30%成長しかできていないことに、幾つかの壁を感じている

全ては自社の力不足に起因するのだけど、
自社の利益の為とかではなく、
日本の観光の活性化を考えた時に乗り越えていかねばならない

「ガイド」が全てだが、未成熟なガイド業界

ガイドツアーにおいては、「ガイド」がすべてと言っても過言ではない

もちろん、コンテンツを磨いていくことも必要だが、
それを届けるガイドが素晴らしければ、ゲストは満足するし、
ガイドが未熟であれば、ゲストからクレームをもらうこともある

「人」が全てだ

自分たちは5年間、ガイドの育成に特に力を入れてきた

多くのガイドの教育に携わってきたが、
やっと定着してきたガイドさんが、巣立っていってしまうケースも目に付くようになった

ご家庭の事情で離れてしまうのはやむを得ない

それだけではなく、育つまでは自分たちの仕事を受けてくれるけど、
ある程度経験を積んだら、より条件のいい仕事のある会社に移ってしまう人もいる

経済的合理性を考えれば、当たり前の話だ

とはいえ、条件のいい会社であっても、
「ガイドだけで食べていける」環境がまだできていない

2014年と少し古いデータだが、
通訳案内士の過半数は年収200万円以下というデータもあった

そして、一方で自社ガイドの養成をしていると、自社の基準に合わないだけで、
他のツアーでは活躍できそうな方や、いつか芽が出る人とご一緒出来なかったりもする
もう一つは実際問題、
語学が喋れる、あるいは資格があるだけでガイドができると勘違いしている人も多くいる

教育に力を入れても入れても、蓄積されていく感じが弱い
このままだと日本のガイド環境を変えるのに何十年かかるだろう…

稼げるから、努力するインセンティブが働くし、いい人が仕事を担うようになるし、
いい人が担うようになるからより大きな価値を提供できるようになる

「ガイド」という職業が確立されて行くことが、
観光をより盛り上げていく上で不可欠だ

「ガイド」という土壌をしっかり耕していかないと、
小さな世界で自己満足して終わってしまう

では何をすればよいか

成長市場においては、パイの奪いではない
いい商品の生産量が上がれば、市場は伸びる

鶏と卵であるが、ガイドの収入が上がれば、
自然と優秀な人材が増るとともに、サービスの質は上がる

分かりやすいドライバーはガイドの収入をあげることだ

事業者:利益=売上[売値×本数] -経費
      = 売上[売値×(ガイド数×稼働率)] -経費
ガイド:収入=受託単価[売値-事業者経費等]×稼働率

ガイドの収入はどうすれば上がるだろうか

事業者が「高く」「たくさん」売って、経費を抑えて、
ガイドに還元すればいい

しかしながら、いいガイドさんのツアーだからと言って、
高く売ろうとすると、面白いように売れなくなる
売れないからガイドに還元もできない

ガイドの育成にコストもかかれば、
スケジュールの確認や諸々の調整にコストもかかる

ガイドさんから見ると、
なんで旅行会社がそんなに抜くのかと思われるだろうが、
販売のコストも馬鹿にならない
(大手のOTAは20-30%の手数料を要求してくる)

事業者が抱える壁
  • 高値で売れる価値を持った商品を創るのは難しい
  • 価値を価格に転嫁し切れていない
  • ガイドを育成できていない場合に、催行できる日が限られる
  • 市場を拡げられていない
  • 効率的に市場へのアプローチが出来ていない
  • ガイドの育成にコストがかかる
  • 販売のコストも大きくかかる
  • アナログな面も多く、スケジュール調整等も効率化できていない

それと同時に、
ガイド目線で行くと、高値で年間沢山稼働できればいい

しかし、そもそも最初は仕事の取り方がわからず苦戦する
とりあえず研修ばかり受けて、研修貧乏になる人も少なくない

経験を積んできても、高報酬で待つと仕事があまりとれなかったり、
稼働をあげたくても1旅行社が持っている案件は限られたりする

桜と紅葉の時期は忙しくてもそれ以外の時期は暇な人も多い

多くの旅行会社に登録しようとしても、
別々に申請、面談、審査、スケジュールを提出し、、、
ある旅行会社で評価されていても、別の会社では新人となり、
信頼性を仕事・価格で評価してもらうのが難しい現状がある

ガイドが抱える壁
  • 仕事の貰い方がわからない
  • 勉強的研修の機会は多いが、ゲストから求められている能力を磨く機会が少ない
  • 高い単価を設定しづらい
  • 稼働がなかなか上がらない
  • 複数の旅行会社に登録するのは手間がかかるし、非効率である

街に煙たがられる「ガイド」という存在

加えて、危機感を感じるのは、街から聞こえてくる声だ

個人的には、ガイドがいることは、
ゲストにとっても、街にとっても、いいことだと信じているが、
そうではないケースも散見されている

「ゲストのために」という大義のために、街に気を遣わない人が多いようだ

「もうあのガイドさんは出禁だ」と実際耳にするし、
「ガイドツアーでは10時前には来ないでください」というお達しが
大手旅行会社あてに送られていたエリアもあった

いや、勝手に来る人の方が、マナー知らないし、迷惑なんじゃ、、、とも思うのだけど、
なまじ我が物顔のガイドがついているとよりたちが悪いというのだ

「観光ツアーは、地域を借りて商売をさせていただいている 」

そのことを忘れちゃいけない
それを忘れてしまったら持続可能な観光はあり得ない

現状、個人のガイドと地域が対話をする機会は少ないが、
ゲスト・街双方の気持ちを考えて、目指す先を模索していかないといけない

「観光公害」を自分事として考えていく必要がある

街・地域から感じる壁
  • ガイドツアーが、地域の方の邪魔をしている

壁を超えるためのJapanWonderGuide

このように感じてきた壁を乗り越えるべく、
自分たちが取り組むことを決めたのがJapanWonderGuideである

「ガイド団体」というより、ガイド事業といった方が近いかもしれない

JapanWonderGuide事業
  1. プラットフォーム事業
  2. 研修事業
  3. ネットワーキング・環境整備
  4. 啓蒙活動

研修・ネットワーキング・環境整備等を通じて、
スキル高く、街のことも考えられるガイドの育成を進める

ガイドっていうと、国内だとボランティアガイドのイメージが強いかもしれないが、
プロのガイドに求められる能力は、とても多岐にわたり、奥が深い
そのような人財が増えていくことは、
ガイドだけでなく、観光産業全体の人財育成につながる

それとともに、プラットフォーム事業で、実際の仕事に繋げていく

プラットフォーム事業では、単にゲストと繋ぐだけでなく、
ガイドを必要としている旅行業者とも繋ぐことで、
ガイドとしても効率的に仕事を獲得でき、
旅行会社としてもコストを引き下げることを実現していきたい

信頼性を見える化することで、価値に正当な報酬を得る仕組みを作り、
同時にコストを下げることで、「稼げる」体力をつけていく

啓蒙活動に関しては、将来の担い手育成に働きかけていきたい

個人的にも母校にお邪魔させていただいたりもしたが、
キャリア教育も盛んになってくる過程で、
ぜひ通訳ガイドの話を聞いていただければと思っている

「ガイド」が憧れの職業になる日

JapanWonderGuideの先に何があるか

自分たちは明るい未来を描いている

JapanWonderGuideが目指す世界

ゲスト・地域双方に通じたスキルの高いガイドコミュニティを創り、観光人財の育成を通じて観光立国に貢献していく

  1. 日本のガイドの質を世界一に育て、職業としての地位を確立する
  2. 地域の消費拡大・交流人口増に貢献し、持続可能な観光の活性化を目指す
  3. 民間外交官として、国境を越えた相互理解の促進・世界平和に繋げる

最近のインバウンドは、訪日外客数や消費額に焦点が当たりがちだが、
観光の価値は、それだけじゃない。もっと先を目指すべきだと考えている

ちゃんとガイドが職業として認められるようになる
いいガイドがいることで街とゲストを楽しくつなぎ、持続可能な形で観光は活性化する
そして、観光活性化の先には、相互理解の促進・世界平和がある

世界平和に貢献できる民間外交官

10年後には、小学生のなりたい職業は、YouTuberではなく、ガイドになる

そんな日を夢描いている

それが実現したころは、
きっと観光産業が日本に根付き、日本も世界の観光立国の一因になっているだろう

だから今月、
自分たちはJapanWonderGuideを始める

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