もう1か月が経ってしまいました。
縁があってツーリズムEXPOジャパン2022(TEJ2022)で、通訳ガイドのPR業務の運営を担当させていただくことになり、終わった後に、すぐにまとめようって思いながら、早いものです。
このままだといつまで経っても書かないまま時が過ぎそうなので、限られた時間の中で整理も幅出しも不十分なままでも、とりあえず世に出そうと思って書き始めました。
突然のPR業務の運営と各ガイド団体との協業
ツーリズムEXPOジャパンというと、僕たちの中ではVisit Japan Travel Mart(VJTM)という海外旅行会社との商談会の裏で行われている旅行博、という印象でしかありませんでした。
明らかに盛り上がっているのは一般の訪問者を対象にしたツーリズムEXPOなのですが、僕たちのメインはずっとBtoBの商談会であるVJTMだったので、「裏番組」という印象でしたし、自分たちが関わることになるなんて想像もしておりませんでした。
遡ること今年の2月、あるオンライン企画を見ていただいた方からお声がけいただき、ガイドシンポジウムの全体進行をさせて頂いた時に、日本観光振興協会さんとの縁が生まれました。
そのご縁もあり、僕たちのできることを提案させていただき、今回のPR業務の運営を担うことになりました。
個人向けの旅行博は初めてでもあったのですが、考えていたことは「他の事業者と連携して通訳案内士の認知向上に努めること」と「ガイドの魅力を体感してもらうこと」でした。
ガイドの魅力を体感してもらうにあたっては、案ベースでやりたかったけど没になったことがあったり、VR体験自体初めてのこと過ぎて胃がキリキリしていたりもしたのですが、通訳案内士の方々の協力および福島県双葉町の盟友山根さんチームの活躍により、何とかいい形で終えることが出来ました。
そして、もう一つ考えていたこと「他の事業者と連携して通訳案内士の認知向上に努めること」に関してもタイトなスケジュールな上に、こちらも出口までの全体像が見えてない中での声掛けにも関わらず、主要通訳案内士団体である協同組合全日本通訳案内士連盟さん(JFG)、一般社団法人日本観光通訳協会さん(JGA)、NPO法人GICSS研究会さんにご参加頂き、一緒にPRを行うことが出来ました。
他のガイド団体との距離感って行うまでは正直わからない部分もありましたし、各団体同じような感覚を持っていた面はあるかなと思いますが、結果的には、お互いがそれぞれの団体のチラシも来訪者に渡したり、話が終わったら紹介したりと、いい塩梅の距離感と尊敬を持ちながら情報の発信が出来たのでは、と感じています。これからも共同で行えることは行っていきたいと思っているところです。
1か月経った今も、無事終わってなによりというところではあります。来年に向けてというところだと、今年は、酒蔵ツーリズムの一角を間借りする形で、良くも悪くも酒蔵ツーリズムに勘違いされてしまった部分は、もっと通訳ガイド色を前に出せればと思ったところでした。
(良くも:酒につられて話を聞いてくれた。悪くも:酒蔵ツーリズムの話を聞けると思った)
前置きが長くなりましたが、今回の出展を通じて、準備段階から当日に到るまで、様々な方とコミュニケーションする中で思ったことを書き留めていきたいと思います。
ガイドに感じた7つの可能性
- ガイドの需要を様々なシーンで強く感じた
- 「通訳ガイドを探してるんです」って声をかけてくれる観光事業者の方もいれば、自治体や他のツーリズム団体等とも、ガイドに関する意見交換する機会も多く、ニーズを強く肌で感じることが出来た。
- ガイドになりたいという人とも出会うことが出来た
- 「ちょうど先日この資格のことを聞いたところだったんです!」っていう若者もいた。現状でもどこかで情報を拾ってそう興味を持ってくれる若い人がいるということには可能性を感じた
- 発信することの手ごたえを感じることが出来た
- 逆に今回をきっかけに、「通訳案内士」っていう存在を知ってくれた人もいた。旅行博って旅好きが来るので、通訳案内士の良いターゲットだと思うのだけど、これまでこうした発信はしてこなかったということもあり、伸びしろを感じた。こうして情報発信していくことの必要性も改めて感じることができた。
- ガイドの価値を改めて感じた
- 館内ツアーを実施する中で、「ガイドがいたからよりお酒が美味しく感じられた」という感想もあり、まさにそれ!と感じる一コマでもあった。
- イケてるガイドのスキルの高さはどこでも通じる能力だと感じた
- 館内ツアーの準備期間は、業界日だった2日間だけ。その中で形を作り、ゲストを楽しませる、腕一本で食べていくガイドの実力を垣間見た。VRツアーにしても、イレギュラーに対する対応力等、柔軟性・適応力を感じ、こうした人が既にガイドとして活躍していることも凄いことだなと感じた。
- 他のガイド団体の熱い想いにも触れることが出来た
- 他のガイド団体の方々は、これまでインタビューや挨拶をした程度の距離感だったが、一緒にブースに立ってみて、ガイドの魅力を伝えたい、多くの人に興味を持ってもらいたいという点では同士だな、ということを感じることが出来た。
- 資格が不要になり拡がるニーズも感じた
- 「無資格者を派遣してくれるところを探してます」そんな声も、複数聞かれた。他の通訳案内士団体の中には、通訳案内士の特権復活による地位向上を目指している様子も伺えるが、個人的には、すそ野が広がる中で有資格者の努力により地位を築いていくことが、結果的に市場全体の拡大に繋がると思っているので、いい傾向だと感じた(うちもそんな無資格者いないんだけども。。。)
通訳案内士・ガイド業界に感じる3つの課題
- 発信力不足・知名度不足
- こうした形で通訳案内士のPRを行ったのは初めてではないかと思うのだけど、もっと「通訳案内士」のマーケティングをしっかりしていく必要があると思う。今回日本観光振興協会にてこのような機会を設けて貰えたけど、受験者・資格者を増やしていくためには、所轄官庁である観光庁が音頭を取ってもよいのでは、と感じた。そして、僕たちももっとホームラン狙って情報発信をしていかなければ、、、
- ガイド全体推進の官庁的司令塔不在
- 通訳案内士団体と共にPRをしたけど、通訳案内士団体は「通訳案内士」の地位・向上が主な活動の目的でもある。僕たちは、「ガイド業界」全体の底上げがされないと、結果的に多言語が喋れる「通訳ガイド」のすそ野は広がらないと思って取り組んでいるが、思えば誰も司令塔的存在がいないことに気付いた。エコツーリズムは環境省が取組み、ボランティアガイドは日本観光振興協会が取りまとめをしていたりする。どこかが音頭取って、「ガイド」を考えてくれればいいのにって思ったけど、それがうちだって思いながら取り組む以外にないって思ってる
- 高齢化
- 「若いガイドいる?」ダイレクトに事業者から聞かれた。他の団体も同様だと思うけど、僕たちもやはり年齢層の高齢化は否めない。「若い人がいい」と言いたいのではなく、多様性が必要だ。アドベンチャーツーリズム等が増えれば、体力があるガイドが求められるケースも増えてくると思うけど、そこを受け入れるガイド層・ネットワークを創る必要がある。
「ガイドの未来について話そう」
ここでは書きづらいけど感じている課題もあるので、それはまたどこかの機会で話せればと思っています。
一点、今回の運営の過程で、ある方から「ノットワールドの活動が、通訳案内士の受験生減少の一因と多くの通訳案内士団体が考えている」と言われたことは若干心外でもありましたが、そう感じている方がいることが分かったことも今回の活動の一つの成果でした。
僕たちが有資格者と無資格者をそこまで区別せずに接していることに端を発しているようでした。
そのことは事実で、僕たちは資格の有無ではなく、最終ゲスト満足度を判断軸としています。
理解していただけるかはわかりませんが、若干補足をさせて頂きます。
僕も通訳案内士の資格は取りましたし、多くのお世話になっているガイドも通訳案内士の方々であり、通訳案内士の資格自体は有意義なものになって欲しいし、受験者数も爆増して欲しいと思いながら事業にもあたっています。
ただ有意義なものになる過程では、業務独占の復活という逆行は、現実的ではありませんし、ゲストにも迷惑をかけるものになると感じているのも事実です。
そして、変に「全国通訳案内士」が自分の利益を守ろうとすればするほど、「無資格者を探してます」みたいな動きは強くなりますし、インバウンドガイド協会が進めようとしているような、別の検定制度が生まれる動きにもつながります。守ろうとした結果、衰退していく可能性もあります。「通訳案内士」制度自体は可能性は秘めていると思う一方、形骸化するとしたら、ここだと思ってます。頑張って何とかしようとしているはずが、市場から求められなくなるジレンマ。
個人的には、ガイドという存在がより一般的になって、層が広がっていく中で、「やっぱり資格は持っていた方がいいよね」「資格持っている人ってやっぱ凄いし輝いているよね」という存在になっていくのがあるべき道なのではないかと感じています。
例えば、ソムリエを例にとってみても、ソムリエって社会一般からある程度評価されますし、業界内外の人が取得したいという意欲の対象となる資格だと感じています。ソムリエ自体は、その資格がなくても仕事は出来ます。でも一流の人は持っていて、胸にバッジが輝いている。その存在を見て、あれを目指そうっていう人が増えるわけです。
色んなアプローチがあって、「通訳案内士を魅力的な特権が付いた資格にすること」も一つですし、「まずはそもそもガイドになりたいと思う人を増やすこと」というのも一つです。
(最後のコンバージョン率を高めるか、そもそも最初のパイを増やすか、という確率思考な話です)
僕たちとしては、両方進めていきたいと思ってますが、後者のアプローチがより目立った結果、そう受け止められているのではないかと感じています。
ソムリエと通訳ガイドで違う点をあげるとすると、ソムリエのサービスは受ける機会があるが、通訳ガイドのサービスは受ける機会が殆どないという事です。
これだと、なりたいと思うきっかけの数がそもそも少ないわけで、そこから手を打っていかないといけないと思っています。つまり、通訳ガイドのサービスを受ける機会がないなら、(日本語)ガイドのサービスを受けてガイドに興味を持ってもらうところからはじめないといけない。
そのような状況で、「資格持ってるとこんな特権あるよ」って言っても影響は限定的で、まずは、ガイドに興味を持ってもらうきっかけを作ることが大事だと考えています。
ガイドにさえ興味を持ってもらえれば、今後、より日本人で多言語を使える人も増えるでしょうし、魅力的な潜在通訳ガイドは増えていきます。
なので、通訳ガイド云々ではなく、日本にガイド文化が根付いていくことが、結果的に、ガイドの層が広がり、魅力的な通訳ガイドの人数も増え、日本の観光の活性化、観光立国日本に繋がっていくんだ、そう信じながら、ガイドコミュニティJapanWonderGuideに取組んでいます。
JapanWonderGuideのメンバーの方々はそうした思いにも共感いただいていると思っています。多くの方がゲストはもちろんのこと後進にも魅力が伝わるよう、自己研鑽に取組む姿、ゲストや講演における聴衆と向き合う姿には頭が下がりますし、SNS等の発信を見ていても頼もしく感じています。
ある方の発言も、目指している結果は近いのでは、と感じながらも、アプローチの違いから生まれる行き違いかな、と個人的にはとりあえず理解しています。
可能性・課題の話から最後の脱線に到るまで、整理も幅出しも不十分なまま、長々と書いてしまい読みにくい部分もあったかと思いますが、ここまで読んでいただいた皆様、ありがとうございます。
(今後見返したベースで加除修正していくかもしれませんが、ご了承ください。)
ちなみに最近、毎週金曜日に「1万人を超えるゲストを迎えたツアーの誕生から現在までの7年の成長記録」という物語を投稿しております。
こちらはどちらかというと「ツアー運営」をテーマに過去を振り返ることが中心になっているのですが、「ガイド」をテーマに投稿していくべく、眠ってるnoteを呼び起こして、「ガイドの未来について話そう」というマガジンを不定期で更新していこうかと思っています。(いつ何を書き始めるかは全くの白紙です)
なんでnoteにしようかと思ったかは「気分」ですが、noteの「マガジン」っていう機能は他の人の投稿もマガジン内に追加できるようで、何ならみんなと一緒に「ガイドの未来について話す」ことが出来るのではないかと思ったからです。ぜひガイド界隈の方々ご一緒しましょう。
ガイド文化を日本に定着させていくことが出来るよう頑張ります。
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