Airbnbと聞くと、まだまだイコール「民泊」だと思っている人も多いと思います
2016年11月にこっそりスタートした、
宿泊ではない体験サービスを提供するAirbnb experienceは、
2017年に飛躍的に成長し、2019年の現在では東京だけでも数えきれない体験数が掲載されています
「こっそり」と書いたのは、最初は本当にホストを厳選し、慎重な立ち上げを行っていました
C2Cに限定していたAirbnb experienceのサービスを、
B2Cでビジネスをしていた自分たちは当初横目で見ていました
あまりの勢いに横目で見ているわけにもいかなくなり、
こっそりしなくなったくらいの2017年の年末に登録しました
2018年はC2Cにおける定義の試験的緩和等もあり、動きやすくもなり、
おかげさまで数千人のゲストにAirbnbを通じてお会いしてきました
Airbnbの凄さは、集客力もさることながら、
定期的なミートアップを通じてホスト間のコミュニティの強化にも感じました
個人的な驚きは、ホストの熱狂的なまでのAirbnb愛でした
前段が長くなりましたが、
日々Airbnb experienceに触れる中で感じる、
短中期的なガイド業界の課題を思いつくままに列挙してみます
地方での観光人財不足
Airbnb experienceを覗いてみると
東京や京都・大阪では数えきれないくらいの体験が表示されます
しかし、日本の地方に目を向けると状況は一変します
地方っていうより、むしろ「都市」仙台を抱える宮城で調べてみると、6件しかヒットしない
「仙台市」となっているが3件は気仙沼の同一外国人ホストによるもの
1件はこの度大雨被害があった丸森町のホストによるもので、仙台市内は実質2件…
もちろん東京や京都はニーズがあるから、供給も多くなります
供給が少ない場所は、単にニーズが少ないだけかもしれない
とはいえ、逆に、
面白いコンテンツがあるからニーズが増えていく、という循環も起こりえます
地方の人と話していると、
・英語の話せる人財が少ない
・話せたとしてもどうやって始めたらいいかわからない
といった声を耳にします
いいガイドをどう地方で増やしていくかは、
日本の観光を考えた際の大きな課題です
「英語の話せる人財が少ない」について、
接遇研修とかで簡単な英語研修を見かけるようになり、いい流れだなと思うけど、
ガイドを増やす意味では、フィリピンへの1カ月留学とかが有効なんじゃないかと思います
ちなみに、「宮」つながりで、宮崎を検索したらこんな結果でした
お、宮城より多くて、11件もある!
と思ってよく見たら、鹿児島が7件、熊本が4件でした
「地方は東京から数年遅れてブームが来る」とか昔は言っていたけど、
人財不足の問題ではなく、そうしたタイムラグの問題だと思いたい
二次交通問題等法整備の未成熟さ
上記で地方における人財不足問題を取り上げましたが、
地方でこうした体験サービス・ガイドが育たないのもちろん人の問題だけではありません
「どうやって始めたらいいかわからない」人の多くが考えるのは、足です
日本の地方部を車をなしに回ることなんて、
ネギでそばを食べなきゃいけない大内宿の蕎麦屋以上に難しい
とはいえ、ガイドとは別に、タクシー等を利用するとなると、
ゲスト目線で見たコスト的に相当割高になり現実的な選択肢で無くなってしまうのも事実です
道路運送法上、無償なら構わないが、
許可なく有償で人を乗せる事業を行うことは禁止されています
昔は、「貰っている報酬は通訳案内に対するもので、
自家用車の運転は無償で行っているものです」と整理していた地域もありました
2017年8月に国交省・観光庁からお達しが出て以来、完全に禁止されてしまった
タクシー運転手に多言語でガイドできるようにする、
通訳案内士に2種免許を取らせるなど、いくつかの動きはあるようですが、
高齢者の免許返上を促す流れもある中、根本的に時代に即して一度見直さないと、
観光だけじゃなく過疎化にも対応しきれなくなります
観光「商品」を創るノウハウ不足
だいぶ話が地方に寄ってしまいましたが、エリアに関わらず感じたのは、
「どうやって始めたらいいかわからない」に対して情報が少ないことです
Airbnbの体験ホストも紹介プログラムがあります
この紹介プログラム、実のところ、誰がどのステータスかを知ることができ、
もし、知り合いであれば「大丈夫?何か困ってたら相談乗るよ」と、
紹介者が新しいホストをフォローできるインターフェースになっています
(実際には知らない人ばかりでフォローしたことはないのだけど)
今日までに15人が登録を試みたものの、
実際に体験をゲストに提供したのは2名に留まっています(もう少しで3名目)
つまりは、残り12名は作りかけたところで停まってしまっているということ
きっと、本業がある中で、
「とりあえず気になるからやってみようかな!」となったものの、
「うーん、めんどくさいな。また今度にしよう」となってしまい、
「ってか、別にやんなくてもいっか」となってしまった気がする
「やってみようかな!」と思った人の背中をもう一歩押せれば、
迎え入れる観光人財に引き込めたのに、と思うとちょっと持ったいない
※体験ホストを始めてみたい方はこちらから登録できます
※ご質問・ご相談はコメントかTwitter@sasakifumitoまで
有資格者ガイドのリテラシー不足
これは、別に大きな問題じゃないかもしれない。
でも、ちょっと、あれ、って思うポイントです
それは、
「通訳案内士として活躍している人を、
あまりAirbnb体験ホストとして見かけない」ということ
・通訳案内士の人は旅行会社の仕事で潤っているから問題ないんじゃ?
・個別のゲストとのやり取りが面倒なんじゃないの?
色んな見方ができると思います
でも、例えばTripleLightsという通訳案内士を中心としたガイドマッチングサイトには
そこそこの登録数があるんです
「仕事がなくて困っている」という声もよく聞ききます
そうなると別のところに原因はありそう
- ITや新しいモノに弱い(Airbnb experienceというガイシ系はとっつきづらい)
- 商品の作り方がわからない
- 「通訳案内士」としてのプライドが邪魔する(アンチ無資格ガイド)
サポートしてあげることで解決できる部分も大きい
一方で、ゲストがGoogleを使いこなしているのに、ガイドが使いこなせないと、
ガイドがゲストにガイドしてもらうようなシーンも増えてしまうかもしれない
常に新しいものを取り込んでいく姿勢は必要です
Airbnb experienceにしても東京・京都・大阪の競争はもうし烈だけど、
それ以外のエリアはチャンスだと思うし、気になったら手を動かしてみればいいのに
ガイド業界におけるキャリアの描き方
2016年11月のサービス開始から3年経ち、
今後顕在化してくると個人的に思っているのはガイドのキャリア問題です
同じコースを毎日毎日毎日毎日ゲストを連れて歩くこと
もちろんゲストは毎日毎日毎日毎日毎日毎日違うし、違った面白さはあります
日本に来てツアーをとってくれるゲストは異世界の人も多く刺激的です
でもそれも1年経てば、だいぶパターン化してきてしまったりもします
マンネリ化してしまうのもしょうがないこと
実際、
500件超のレビューもあり、定期的に安定した申込があったホストでも、
立ち止まったり、辞めてしまったりというケースを目にしました
ガイドという仕事が天職だという人も見かけるけど、
天職じゃない人も楽しみ続けられる業界にしていくことが、
有望な人に続々参加してもらうために必要なことだと感じています
あるトップホストは色々な企業とも提携しながら、
活動の幅を増やしていたりもします
そういう本業活用型だけでなく、
観光の世界の中で、
VIPを任せられるようになる・先生役になる・ビジネスを創る・DMOに携わる・・・など、
幅と同時に深みをつけていくことが求められるだろうと感じています
P.S.プラットフォームの先行者優位の今後
色んな人が観光におけるガイド的サービスに興味を持ったという点で、
本当にAirbnb experienceっていうサービスはすごいなと思うし、
自分たちもそういうインパクトを産んでいかねばと感じています
それと同時に、TripAdvisorと言い、Airbnbと言い、
後発者は戦いにくいフィールドだとも思います
今東京のトップホストの体験のレビューが約1800件。ほぼほぼ全部5点評価。
これから参入しようと思っても、勝てる気がしないわけで…
(だからこそ、
地方の人に、始めるなら今だ!と何度でも言いたい
こんなにもお客様を持っているのに、
競合の少ないブルーオーシャンはなかなか存在しない)
成熟しつつある東京とか見ると新しい風が入りづらそうに見えます
そうなるとプラットフォームとしては面白みに欠けていく部分もあります
認識しているだろうけど、大きな課題なんだろうなぁ
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そんなこんな
自分の頭の中の整理的な投稿になってしまいましたが、
長文お付き合いいただきありがとうございました。
課題を解決していくべく、一つ一つ歩んでいきたいと思います。
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