「観光コンテンツをつくろう」という動きは日本全国で取り組まれていて「ツアー造成」「ガイド育成」「プロモーション」事業は日本各地で行われています。現場感がない人も多い中、少しでも現場感が多くの人に伝わればと思い「1万人を超えるゲストを迎えたツアーの誕生から現在までの7年の成長記録」をお届けします。
第2話は「最初のゲストにどう届けるか?3000円からのスモールスタート」です。商品は売り場に並べないと始まりません。「売り方が分からない」は言い訳です。できることから手を動かしてみるしかありません。
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さぁ、ツアー商品は何となく形にした。あとは海外のゲストにどうやって届けるか、だ。
2014年末は、まだ、体験・アクティビティにおけるOTA(Online Travel Agency)が充実していなかった。今や最大手と言えるViatorは、TripAdvisorに買収された直後で、今とは違い最初の登録に数万円必要なセレクトショップのような存在だった。Airbnbも体験のマッチングを始める前。GetYourGuideも日本オフィスはなかったし、当時存在すら知らなかった。
創った商品を、店頭に並べないと売れるわけがない。これは子どもでも分かる。
加えて、店頭に並べないと売れないだけではなく、課題も顕在化しない。
最近だと、「OTAが低コストではじめることが出来るのでお勧めだ」という話を全国各地でしているが、2014年末当時、僕たちがどうしたかを話そうと思う。
結論から言うと、自分でホームページを作った。
恰好いいホームページではないし、カレンダーも決済機能も付いてないツアーを販売するのには適していないホームページだ。
WordPressで作ったサイトで、機能としてはブログに毛が生えた程度のトップページとContact form7という無料サービスを付けて問い合わせフォームだけは用意した。それだけだった。
(当時のドメイン・URLはもう閉鎖してしまったが、サイトの作り方はこちら)
もちろん、機能の揃った、かっこの良いホームページがあることに越したことはない。ただ、ちゃんとしたサイトを作ろうとすると100万円とか軽くかかったりする。加えて、その写真撮影に10万円、動画作成に20万円、営業用の資料も作るとそれで10万円、とお金はどんどん飛んでいく。ちゃんと事業計画書作って投資をするならそれも一つの道だけど、個人事業主だったり、ちょっと新規事業として試しに始めてみようとするには手軽な投資ではない。
諸々の宣伝素材等をちゃんと揃えて、いいホームページや営業ツールが必須か、と言われればそうではない。自治体の予算でカッコいいサイトを作って、事業年度が終わっておしまいっていうケースも沢山転がっているだろう。無駄だ。大事なのは、何とかゲストに届けたいという気持ちと継続できる体制だ。
そこで僕たちは、手製のホームページを作りアナログなオペレーションからスタートした。
- ホームページにツアー情報を載せ、お問い合わせフォームをつくる
- ゲストからお問い合わせフォームを通じて予約依頼が来る
- ゲストに対してツアーの催行可否と共にPaypalで請求書をおくる
- ゲストがPaypalを通じて決済をしてくれる
- 予約完了のメールを送る
- ツアーを催行する
海外からのゲストはNo SHOWが怖いので、決済機能はホームページにはなかったが、Paypalのサービスを利用することで、メールで事前に請求するオペレーションとした。
「使いづらいサイトだったら半分くらい離脱しちゃうんじゃないの?」「カッコいいサイトじゃないと予約したくない」そういう意見もあるだろう。それはそれで間違いない。
でも、商品が魅力的じゃなかったら、カッコいいサイトでも誰も予約しないし、ゼロだったら半分離脱してもゼロだ。まず実験してみるには、別にかっこ悪くても、確率低くてもいい。予算の問題で行動しないより、粗くても行動した方が、すぐに改善できるだけに、学びは大きい。使いづらいサイトで10人の予約が来るなら、サイトを改善すれば、100人の予約が来るっていう考え方もできる。
ちなみに、そもそもゲストにどうやってホームページを発見してもらったか、という点では、TripAdvisorを活用した。
当時のTripAdvisorはViatorと連携していなかったこともあり、アクティビティについてはただの口コミサイト+リンク集となっており、口コミを見ていいなと思った人を自社サイトに飛ばしてくれる導線だった。
なので、留学生とか在日外国人にモニターとして参加してもらい、口コミを書いてもらう。結果、口コミがたまり、TripAdvisorで露出が高まり、そこから自社サイトに来てくれ、予約が入り、そのゲストが口コミをまた書いてくれ、、、という循環でツアー開始して4か月後には100名のゲストが申し込んでくれるようになった。
(ちなみに最初の1カ月は、有料での参加者は2名。一方で、20名くらいは無料で参加してもらった。)
かかった費用は、ドメイン代とサーバー代で、3,000円程度だった。
「ホームページを自分でつくるのは無理だ」と感じる人もいるかもしれないが、ちょっとググれば誰でも作れる世の中になっている。「無理」なのではなく、やろうとしないだけだし、「苦手」なのではなく、やったことがないだけだ。
その気になれば、グーグル先生に教えてもらいながら、誰でもできる。
環境が変わったので、当時と同じ方法ではいかないけど、何を言いたいかと言えば、そんなお金かけなくても出来ることはいくらでもある。今ならどうするかというと、前述の通りOTAをまずは勧める。OTAで立ち上げながら徐々に自社サイトを強くしていくのが良い。ただ、もはやOTAでなくてもよいとも思っている。Instagram一つ用意して、そこから決済代行サイト等にリンクすれば十分なツアー販売サイトが出来上がる。Facebookでもいいだろう。0円から始められる。
ツアーを売ることに関しては、2014年より格段に売りやすくなった。
日本では2018年くらいから日本全国でグローバルキャンペーン事業をはじめ、各種事業でツアー造成を行ってきたが、造成した商品が結果として商流に乗っていないということが観光庁で課題として挙がっていると聞いた。
それを受け、この2年くらい「OTA掲載事業」が増えたようだ。
「OTAの掲載代行やってくれませんか?」という依頼を受けることがある。掲載を「代行」してあげても、掲載はされるかもしれないが、それでは、ゲストから問い合わせが来た時に、ゲストに迷惑をかけることにもなるし、結果、観光事業者の評判も下げてしまうのでお断りしている。掲載の支援は出来るが、代行は出来ない。意味ない。
加えて、個人的には、問題は「商流に乗っていない」のではなく、オペレーション面や価格面の検討が不十分で「商流に乗せられない」レベルでしかツアーを作れていないものだと認識しているけど、こうした問題も実際に店頭に並べようとしない限りは顕在化しない。
店頭に並べもしないし、磨かれてもいないのに、メディア等を呼んだFAMツアーやプロモーションツールの作成に予算の多くを割いている事業を見かけるたびに、悲しい気持ちになる。支援事業者が予算を使い作業しているが、ツアー催行の主体となる事業者が、自分が主体となる意識に欠けているケースもある。
お金がかかる話じゃない。
ゲストに感動を届けようと、販売・催行まで「手を動かす」ことが大事だ。
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