第11話 観光公害!?観光客が増える中での地域の反応とガイドが気を付けるべきこと

ツアー誕生ストーリー

僕たちのツアーへの参加者も増えていたが、それにもまして、築地を訪れる人は物凄い勢いで増えてきた。当時、築地場内市場は「5人以内で入構すること」というルールがあり、それに従っていたが、その注意書きを読めない外国人のツアーリーダーが引き連れた20-30人の団体が場内に入っていくというシーンも、特に桜の季節は目につくようになっていた。

そうした過程で、適宜僕たちとしてはツアーの見直しやガイドの方々とのコミュニケーションを行っていった。

ガイドツアーは、「街を借りて商売をしている」ということを決して忘れてはいけない。

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1万人を超えるゲストを迎えたツアーの誕生から現在までの7年の成長記録です。 ツアーの企画・運営に興味がある方は是非ご覧ください。ツアー造成・ガイド育成・販路拡大・OTA活用等のリアルが見えてきます。

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「あいつはクレイジーだって言って通過しろ」と言われたあの日

今はなき、築地場内市場。今思えばとてもアジアの空気が流れるエキサイティングな場所だった。
ターレは縦横無尽に走り回り、そこらじゅうでマグロが解体されていた。
所狭しと働く人も行きかうところに、観光客も大勢押し寄せていた。

僕たちは、どこを見ていいかわからないあのカオスな市場において、これは見せると満足してもらえると考えた「生マグロ」「冷凍マグロ」「ふぐ」「うなぎ・ドジョウ」等々を効率よくみて回れるルートを決めてガイドさんと共有していた。

ツアーをはじめた2015年はそこまで混雑していなかった。
なので、場内市場の仲卸の人たちも、多くは邪魔だなとは感じながらも、面白がって説明してくれる人もいた。

しかし、会話を交わす仲になっていた方から、ある日、ゲストに厳しい注意をする声が飛んだ。

話を聞くに、ちょっと前に(ツアーのゲストではない)外国人観光客が、鮪を切る長い包丁を勝手に手に取ったという事案が発生したらしい。それを見て、さすがに観光客が店の前で止まったりするのは安全上よくないという判断に至ったとのことだった。

「あいつはクレイジーだって言ってくれて構わないので、ゲストを立ち止まらせないで欲しい」

こればっかしはマナーの問題だし、あの長い包丁は安全上も問題があるし、しょうがない。
というか、むしろ申し訳ない気持ちになった。

基本的には、場内市場で観光客は買い物することはないので、見学することは仲卸の人にとって邪魔でしかないわけだ。そりゃぁ追い出したくなる気持ちも分かる。

(一方で、「築地・豊洲」のブランドがブランドであるのは、消費者あってこそでもあり、見せるからこそ、その価値を再確認して貰えるんだから、もっとちゃんと受け入れればいいのに、という気持ちもある。外国人旅行者はじめ観光客は直接のお客さまではないが、彼らのお客様のお客様ではある。)

他のお店でも「君たちは良いけど、誰かが立ち止まるとみんな立ち止まってしまうから通過してくれ」と言われることもあった。

「観光公害」という言葉をニュースで見かけるちょっと前だったようにも思うけど、観光客向けの商売をしている事業者は良いが、決してそうでもない多くの事業者も含めて、街は成り立っていることを認識しながら、ツアーを催行していく必要がある。

怒られても一度は基本謝りに行って話を聞いて、次の対応を考える。
なるべくご迷惑をおかけしないようにツアーを催行した

街から試食が消えて、ガイドが敬遠されたあの日

築地場内市場だけでなく、場外市場にも観光客増加による影響は出てきていた。
場外は比較的観光客も対象にしたお店も多かったため、多くは恩恵に授かっているようにも見えた。

しかし記憶が確かであれば、ある日、いくつかの旅行会社・ガイド団体向けに「〇時以前にはガイドを帯同したツアーは遠慮して欲しい」と言った旨の文章が送られたと耳にした。そして、いくつかのお店の店頭からも試食が消えた。

幸か不幸か、僕たちの存在はマイナー過ぎてその文章が手元に来なかったので、対応を変えることはなかったのだけど、場外のお店の方に話を聞くところ「マナーの悪いガイドが多い」という事だった。

どうも、ゲストを連れてお店に来ては、その試食をあたかも自分の商品のように食べさせるだけ食べさせて、大して売り込みもせず、店の中にも入らずに次の店に行ってしまうらしい。

もう話を聞くだけで最悪だ。

またまた申し訳ないという気持ちと、一緒くたにされたくない、という想いの両方があった。

街の人目線で見ると当然でもあるし、こちらからすると何とかしないといけないところでもあった。
一部のガイドがそういう行動をとることで、すべてのガイドがそういう目で見られてしまう。
ガイドとして活動するからには、資格云々ではなく、人として矜持を持ってほしい。

僕たちはガイド研修で、水先案内人であり、街のセールスマンであって欲しい、という話をガイドにしている。中には、「なんか物を勧めることは、押し売りみたいで気が引ける」「海外でお土産屋に連れていかれたときみたいに思われるのは嫌だ」なんて声もあるが、そんなことを想ってるからそう伝わってしまうんだ。

ホントに自分がいいと思うものなら堂々と勧めればいい。
そして、ゲストもいいお土産、いいものは常に探している。

自分が自信をもって勧めた結果、ゲストは「良い買い物が出来た」と喜ぶ。
お店も、ゲストが購入してくれて喜ぶ。次からガイドとして行っても歓迎してもらえる。

この循環は良い事しかない。

必ず売らなきゃいけないなんてことはないし、興味ない人に勧める必要もない。
別に100%売れるなんてお店の人も思っていない。(と思ってる)
でも、街のこと・店のことをどう想っているかというガイドのスタンスは絶対伝わると思う。

話は逸れたが、一度なくなった試食は、場内の移転騒動が賑わしい中、その後徐々に復活したように思う。ただ、ゲストが増えたことにより起きた観光公害というより、ガイドが関わった迷惑行為として記憶に残っている。


特に印象的だった2つの話を取り上げたが、僕たちとしてはガイドの方々に起こったことを共有しながら、地域にも迷惑をかけず、貢献していける形を模索しながらツアーを催行してきた。

ノットワールドのガイドであることを認識してもらうようリストバンドをしたり、ボードを持ったり、名乗ったり、ガイドとツアーを街の人に認識してもらう工夫も色々した。

この話はガイドコミュニティJapanWonderGuideを立ち上げた経緯にも関係してくる。
街として、ガイド個人には注意がなかなか難しいし、ガイドとしても情報を掴みづらい。個人で活動しているガイドの方々をコミュニティとしてまとめることで、相互のコミュニケーションが円滑となり、お互いにとって幸せになれるのでは、、、と感じたことも現在のJapanWonderGuideに繋がっている。

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