第5話 拡大への起点。素敵なガイドさんたちとの出逢いと協業

ツアー誕生ストーリー

超最初の準備段階は、河野がゲストを主にガイドしていた。

で、僕はそれを見ていた。

でも、最初から自分たちだけでガイドするのは限界があると考えていた。多くのゲストにサービスを提供していくためには、ガイドの方々と協業していかないといけない。

2019年には毎月100名程のガイドの方々とお仕事させていただいていたし、既にご一緒しているガイドの方々が、ノットワールドのことを新人ガイドに紹介してくれるような流れも出来ていて、いい感じだった。
しかし、最初は、知り合いもいない中で、手探りでの立ち上がりだった。

2014年~2015年当時は、通訳案内士法の改正前ということもあって、外国人を有償で案内するには全国通訳案内士という資格が必須だった。
もう少し正確に当時を描写すると、インバウンドが急拡大するタイミングで解釈や運用にも議論が生じてきていた時期ではあった。
「スポットなら資格はいらない」みたいな話もCtoCマッチングサイトから聞いたようにも思うし、スキル的には資格にそこまで拘ってもいなかったが、コンプライアンスを考えると、有資格者一択しかなかった。

でも、周りでそんな資格を持っている人なんていない。
どこにそんな資格を持っている人がいるんだろうということで、周りの人に聞いた。

結果的には、観光事業者の支援を行っているやまとごころ社が、当時は開設していた通訳案内士向けの情報サイトに辿り着いた。(今は閉鎖している)
そこに、求人情報を掲載すれば、通訳案内士に届くというので出してみたところ、ちらほらと、通訳ガイドの方から連絡を頂いた。

困ったときは自力で悩むより、知ってそうな人に聞いてみるのが早い。
「聞いても教えてくれないかも」「相手の手を煩わせる」と思って立ち止まる人も多いと思う。ただ聞くのは自由だ。
聞いてみれば、答えが分かる可能性が少しでもあるなら聞く以外の選択肢はない。
聞いてみて、「教えない」と言われることはあるかもしれないが、嫌われることなんてまずない。
とにかく一番知ってそうな人に聞いて、「教えて下さい!」って言ってみるといい。

話がそれたが、僕たちは最初からガイドがゲストの満足度に大きく影響すると思っていたので、まず個別に面談し、ツアーの趣旨等を話しながら、どんな人かを知るところから始めた。

当時は僕たちもオフィスもなかったので、新宿や東京駅の喫茶店で、ガイドの方と面談した。

条件やツアーの内容等で、全員が興味を持ってくれたわけでもなかったが、何人かと会ううちに、ツアーをやってみたいと言ってくれる方や、「ツアーは出来ないけど知り合いに情報を伝えてあげる」と言ってくれる方とお会いすることが出来た。
動き出してみると、また色々見えてくるものだ。

ちなみに、条件面で行くと、通訳案内士団体が、「1日○○円、半日△△円」という基準を掲示していたが、その基準で行くと、どうしても最少催行人数が「定員6人なのに、最少催行人数も5-6人」みたいな現実感ないものになったり、
ゲストが参加しづらい料金になってしまうことになるので、前述の通り、マニュアルを整備する代わりに、そこらへんのバイトよりは全然いいけど、通訳案内士団体が定めた水準よりは低い、時給2,000円前後のレベルに設定した。
マニュアルもあるので仕事の難易度的に妥当な水準だと今でも思っているが、単に額面だけみて「安い」と言われるのは、歯がゆさもあった。

報酬面での条件が悪いと言われる中では、僕たちの想いに共感してもらったり、他のメリットを感じてもらうしかない。
ツアーに興味を持っていただいた方には、実際に築地に来ていただき、どこをどう回るのか、等のを実地で伝えさせていただいた。

今思えば、ガイドさんの方が、築地に関する基礎的な情報は知っていたかもしれないが、「食べ歩きツアー」ということで、ツアーとしてお店にお金を払うこともあり、お店の人との関係性が構築できることはガイドの方にとってもメリットだったと思う。
ご子息が僕たちと同窓ということで共感いただける方もいて、そうした縁もありがたかった。

今でこそ、「基礎コミュニケーション研修」など、育成カリキュラムも充実してきたが、その当時は僕たちのツアーの大切なポイント等を言語化できていなかった。
築地をご案内したら、実際にツアーをお任せし、フィードバックさせてもらう。
そんな完全OJTで僕たちのツアーはスタートした。
2015年は、素敵なガイドさんであっても、そんな引っ張りだこではなかったのは、タイミングとしてありがたかった。

2015年1月は2人だったゲストも、4月には100名くらいになった。
ガイドの方のご都合がつかず、河野が出動することもたまにはあったが、数名のガイドの方と協業させていただくことで、拡大に向けてのベースを築くことが出来た。

ガイドの方からは、「ノットさんのツアーはゲストが素敵な人が多いからやってて楽しい」「子どもがいる中で、半日の仕事だからできる」といった声も聞こえてきた。
条件以外にも、働く上で考慮される要素があることを実感した機会でもあった。
数カ月たったころには、やまとごころ社のサイトだけではなく、ガイドさんが他のガイドの方を紹介してくれるケースも増えてきた。

当時のガイドさんの中心メンバーの多くは、今でも仕事を引き受けてくれている。
「他と比べて安いけど、楽しいので」と言ってくれるのは、ありがたくもあり、それと同時にガイドの方々の地位向上に向けて根本的に取り組まなくてはと思って立ち上げたガイドコミュニティJapanWonderGuideを展開していく原動力にもなっている。

本当に素敵なガイドの方々とのめぐり逢いにより、僕たちはいいスタートを切ることが出来た。

コメント