ツアーを繰り返す中で、2015年、2016年は、ただただ成長を感じられる日々だった。
競合もそこまで多くはなく、レビューが積み重なれば、訪日客数の増加に伴い、比例してゲストも増えていった。
その頃には桜シーズンや新ツアーを除けば、河野の出番も減っていたし、ましてや僕は本当に桜シーズン等限られた時だけど登板となっていた。
こうした中で、ガイド育成のプログラムは徐々に進化していった
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マニュアルを渡し、背中で見せていた超初期
最初、どうガイドのネットワークを創っていったかという話については、第5話で触れた。
その頃は、なりたいと思ってくれる人も限られていたため、興味を持ってくれた人に築地を案内してはツアーの内容を説明し、ツアーを受けてくれないかお願いさせてもらっていた。
同じタイミングで、築地本願寺前では別のガイド団体が毎日のように築地の研修を行っていた。みんなメモを片手に講師っぽい人の話を聞いては一生懸命ペンを走らせている。
「あれで果たしていいガイドさんになれるのかなぁ」という想いと、「お金を払って研修に参加したい人があんなに要るんだ」という思いを感じていたと思う。
初期の頃は、マニュアルを渡して、築地を案内して・・・で事足りていた。
ゲストからの素朴な質問と研修受けておしまいな状況を受けて
しかし僕たちのツアーもちょっとずつ広がってくる中で、色々な変化もあった。
ガイドさんの話を聞いていると「このツアーっていつからやってるの?」という質問を受けるという。「それにどう答えればいいですか?」という質問が来たのだ。
確かに、ゲストからしてみれば、簡単な、ちょっと雑談的に聞きやすい質問だと思うだろう。でも、初期のガイドは初期を知っていたのですぐ答えられるが、確かに途中から加わった人は、そんな簡単な質問にも当然だけど答えられない。何せ自分たちも「どこを案内するか?」は伝えているが、ツアー自体については、何も伝えていないからだ。
もう一つ全く違う観点で、ツアーの内容の説明だけを興味本位で聞きに来るガイドもちらほら現れた。他社が有料で研修をやっているような内容が無料で聞けるとなれば、そんな人の気持ちもわからないではないが、こちらもビジネスでやっているのだし、ちょっと節操がない。
いつだったかは覚えていないけど、無料での研修は辞め、研修自体を有料に切り替えることにした。
「ワークショップ+実地」という今の育成の原型がこの頃にできた
実際にまち歩きをすると、勉強にはなるし、実践的なのだけど、応用力にも欠ける。
そうした点も踏まえて、座学で、ノットワールドのミッションや歴史を伝えるとともに、どんなガイドが求められるか、とか、どんな話をしなくてはいけないかをワークショップで行うようになった。
良く書かれる口コミに「Friendly/Accommodating/Knowledgeable/Enthusiastic」と言った単語が多い。頭文字をとるとFAKE!だけど、嘘じゃないよ!ってな話はこのころ生まれた。
コミュニケーションの基礎だと言っている「3Sで話そう」という話もこのころからするようになった。
こう書きながら、だいぶ年季が入って熟成してきたなぁという気もするし、もっともっと新しい概念を創出していかないといけないのでは、という気にもなっている。
何はともあれ、このようにガイド育成もより短期にいいガイドを育成していけないかという思考錯誤をしている。
半日→1日→複数日→オンラインとの組み合わせ…試行錯誤の連続
実地だけだったガイド育成は、ワークショップが加わるようになった。
でも、今度はそれはそれで別の課題も顕在化してくる。
例えば、ワークショップで頭の中に入れるという事と、実践で使えるということは、当たり前だけど当然違う。研修を充実させたことで、出来る人の割合は増えたが、それでもまだ躓く人もいるし、時間がかかる人もいる。
そうした中でどうすればいいか、という思考錯誤もこの何年も続けてきた。
ワークショップの時間を延ばしたり、回数を増やしたりしたこともあった。
ワークショップの内容にバライエティを持たせたこともあった。
一度ゲストとして参加して見てもらうことも真似るのが得意な人には効果的だと感じた。
ハンズオンで、実際に現地でガイドをしてもらいフィードバックをしてもらうという方法もある。
あとは、ガイドが負担できる費用と工数・効果のバランスとなる。
一番は自分で自習するのがコスト的には低いし、成長にもつながるということで、今も行っているのは「フリーガイドの推奨」だったりもする。結局、研修の限られた時間で伸ばせる力には限界があり、研修以外の時間をどうモチベートするかが、人材育成の肝ではないかと最近個人的には考えている。
そんなこんなで、まだ答えは見えていないが、今は、E-learning、実地研修、ワークショップ、ゲスト参加、実践演習を交えたフルラインナップとなっている。
これでじゃぁ一人前になれるかというと、そうでもない。
カリキュラムだけでなく、どうフィードバックを受け止めてもらえるか等、コーチングスキル等も伸ばしていかなくてはとは思いながら、試行錯誤を続ける日々である。
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