第8話 まさかの2つ星。悪い口コミとの付き合い方

ツアー誕生ストーリー

比較的最初の頃は順調に口コミを積み重ねたほうだと思う。

しかしながら、全て5つ星を取り続けるのは現実的ではなく、いつかはその時がやってくる。
開始して4カ月たった時、初めての3つ星を貰った。

競合も含めほぼほぼ5つ星の評価が続いている中で、3つ星は結構ショックだった。

今でもtripadvisor上に残っている。

「良かった。でも改善が必要だ」

出典:Tripadvisor

返信機能を使った次のゲストに向けたメッセージ

どこまで細かい歴史や魚の説明をするかのさじ加減は難しい。
興味がない話を一方的にしてはダメな一方、興味がある人にはちゃんと話さないといけない。

Both guidesとあるように、育成の過程で確か2人でガイドしてた時だった。
はたから見て、そんなに悪くもなくゲストも楽しんでいたようだったけど、こう評価されてしまっては受け止めるしかない。

多くのゲストは、最新の口コミを目にして、予約の判断材料とする。
評価の低い口コミがはいった直後は、目に見えて予約が鈍くなった。

早くいい口コミで上書きしていかないといけない。
でも、これをこのまま放置していくわけにはいかない。

僕たちは多くの口コミを貰ってきたけど、基本的には返信をしない。
時間がかかるというのもあるし、オペレーション上個別のメッセージをここに作成するのは困難だ。簡略化しようと定型文にすると、それはそれで逆に薄っぺらく見える。
だから返信はしない。

ただ、悪い口コミの場合、状況は異なる。

先ほど、「最新の口コミを目にして、予約の判断材料とする」、と書いたが、正確には、「最新と悪い口コミ」を見て予約の判断材料とする。
人はリスクを取りたくないので、「悪い場合に何が起こったのか」を把握することで安心して決断をすることが出来る。

なので、悪い口コミは多少古くなったとしても、多くの人の目に触れることになる。

それであれば、口コミの返信機能を活用するほかない。
書いてくれたゲストへのメッセージはもちろんだが、これを読む次のゲストに対してメッセージを発信することが重要だ。

ここで決して無駄な反論はしない。
「え、飲み物が一種類だけだって!?いやいや2種類出したよ!覚えてないの?」とか言わない。
誰だって喧嘩を見ていて気持ちよさは感じない。

基本的には、口コミの返信は、ビジネスのクレーム対応の型と一緒だと思っている。

・フィードバックへの感謝と満足させられなかった部分へのお詫びを伝える
・起こってしまったことへの事実の確認と認識を述べる
・改善の方向性を示す

これが結果的に、次のゲストに対する、安心感の提供と期待値の調整になると思って取り組んでいた。
悪い評価はマイナスではあるんだけど、せっかくだから活かすしかない!

遂についた2つ星…返信機能以外での口コミ対応することも

その後も、おかげさまでガイドにもゲストにも恵まれ、沢山の口コミを積み重ねていくことが出来た。ただ、こればっかしは、いい・悪いではなく、合う・合わないという問題もある。

普段多くのゲストから高い評価を頂くガイドさんに対して、2つ星の評価を付けられた。どうもそのゲストとの相性が良くなかったようだった。

出典:TripAdvisor

僕たちは、当時(今もだけど)、TripAdvisor上で複数のアカウントを持っていた。
これは出発地点のある市区町村でアカウントを分けられてしまったので、築地のツアー、浅草のツアー、砂町銀座のツアー、それぞれ個別のアカウントを有している。

そのゲストを余程失望させてしまったために、複数のアカウントに対して、2つ星の評価を付けられてしまった。ある程度口コミがたまっていた状態だったが、この影響は大きい。

最終的には、TripAdvisorに連絡をして、一つは消してもらった。

「え、悪い口コミって消してくれるの?」っていうと、そんな無条件で消してくれるわけではないが、この時は、確か「『重複して口コミを投稿することは禁止』という利用規約に違反している」と主張して1つは消してもらった記憶がある。

他にも、「すげー楽しかったぜ」って言いながら、1つ星、2つ星の投稿をしているものに関して、ゲストにも修正依頼を送りつつ、口コミサイトにも対応してもらったこともある。
まったく自分のツアーじゃない口コミについて対応してもらったなんてこともあった。

言うのはタダなので、正しいのであれば言ってみるとよい。

AirbnbやGoogleは「口コミはいじらない、返信機能で対応すること」というスタンスの印象があるが、融通が聞くところもあるというのは試行錯誤の中での体験だった。

いずれにせよ、誠実に向き合うことが大事だ。

口コミ以前に求められるゲストコミュニケーションもある

口コミへの対応について書いてきたが、口コミに書かれる以前に対応することもある。

築地のツアーではないのだが、ある時こんなゲストがいた。

「今日の夕方からのツアーキャンセルにしたい。全額返金して!」

こちらからはキャンセルポリシー通りに対応する旨を伝えたところ、「じゃぁいい!予定通り参加するわ!」とのことだった。ツアー前から違和感を覚えていた。

そしてツアー後、「ツアーが物凄い楽しくなかったから返金して。じゃないと悪い口コミ書くから」とメールが来た。目を疑った。こんな、いわゆるクレーマーいるんだなぁと。

ガイドから来たツアー中の写真は笑顔で写っているし、ガイドに聞いてもずっと楽しそうだった、、、とのこと。思わずネットで名前を検索したら、某国出身で、音楽を生業にしているアーティストのようだった。ビジネススマイルの写真をネット上で見ながら、こんな人がいるんだなぁと思いながら、どうしようか考えた。

たかが1-2万円をケチってクレーマーと戦って、悪い口コミが書かれると、1-2万円以上の損失を負うのは明確だった。1-2万円をそんなクレーマーに渡すのも癪だったが、プライドを守るために、会社や結果的にガイドの仕事が減るのも違う。

結局、返金した。
(もう名前も忘れたけどあの写真を見たら思い出せるだろう。某国と某学期のアーティストの印象は悪くなった。)

この1件だけじゃなく、他にも同様のコミュニケーションはあった。

TripAdvisorにはクレーム対応の窓口もあって、事前にその可能性がある場合は、告知しておくと考慮してくれる機能を提供していたと記憶している。

口コミは便利だし有益なのだけど、変わったゲストも生み出すので、そのあたりはプラットフォーム・事業者と共に対応してく必要があるな、と感じた。

器のでかい漢になりたいと思いました

変わったゲストの話をしてしまったし、そんなゲストと向き合いたくないと思った人もいるかもしれないが、世の中とても素敵な人も沢山いる。

ツアーでゲストに満足いただけないケースは沢山あるはずだ。口コミでは95%のゲストから5つ星を頂いているのだけど、不満を持ったけど胸にしまってくれているゲストもいるだろう。

ある時、ゲストからメッセージが届いた。

「先日、ツアーに参加させてもらった。正直期待してたものではなかった。自分もビジネスをやっていてこうした内容をネット上で投稿するとビジネスにどういう影響が出るかを知っている。なので、このフィードバックは直接あなたに伝えたいと思う」

文章の内容は正確には覚えていないのだけど、とても心温まるメッセージだった。

満足しなかったときに、オンライン上で投稿することで、「次のゲストの為に」と大義を言い聞かせながら、自己満足感を得ようとする人の気持ちも分かるが、若干事業者に対する制裁的な意味合いも含んでいる。

世の中をHappyにするのは、マイナスの口コミを世の中に投稿することより、マイナスのフィードバックは本人に直接伝えてあげることなんじゃないかとこの時ハッとさせられた。

「褒めるのは人前で、叱るのは個別で」というマネジメントと同じことなんだろうけど、匿名性の高いネット環境では人前で悪い評価を付けるのも普通になってしまっている。
それが有益でもあるのも事実なのだけど、伝え方等々個人個人が改善の余地があるのかもしれない。

あのゲストからのメッセージは、とても嬉しかったし、僕自身、客の立場であっても奢らず、社会を共によくする一員として、周りの人に何ができるかを考えていこうと刺激を受けた一瞬でもあった。


そんなこんな、いろんな口コミがあるけど、一つ一つに学ばせてもらって個人も会社もサービスも成長していくことが出来た。

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